Q 先日、業者から先物取引をやると儲かるからと電話がかかってきたのですが、先物取引というのは何ですか。
A 対象は、穀物とかガソリンとか金とか色々ありますが、ガソリンの例で話しましょう。日本のようにガソリンの売買が盛んな国では、たとえばある年の年末に、翌年6月のガソリン価格(先物価格)が決められます。
商品取引所で6ヵ月先のガソリンの先物市場が成立します。商品取引所とは、6月のガソリンを今売ろうとする人々の値段や量と、今それを買おうとする人々の値段や量との間で折り合いをつける場所です。
Q そうすると、先物市場は関係業者にとっては値段を一本化してくれたり、売買の相手を探さなくとも市場を相手に取引できたり、高騰、下落のためのヘッジに使えるのは有用ですが、私たち素人には関係ないのでは。
A そのとおりです。関係業者には有用ですが、素人には理解が難しいので、手を出すべきではありません。
ところが、諸外国と違って日本では先物取引業者の顧客のうち素人の割合が非常に高く、90%以上が素人顧客、10%が法人顧客だと言われています。つまり、関係業者の利用率が低いため、取引業者は素人をさそい込んで手数料をかせぐ、ということでこのような構造になっています。
Q 素人顧客も儲かればよいのですが損をするわけですよね。A その通り、素人顧客は100%近く損をします。何故かというと悪質な先物業者は利益をあげる為に客殺しという手法を使うからです。
まず「必ず儲かります」といって何度も電話します。それでひきづられる人は、先物のことをよくわからない素人で、余裕資金もないので適合性(商品取引法215条)違反です。又必ず儲かりますという断定的判断の提供(法214条1号)や十分なリスクを説明しないことは、説明義務違反(法218条、219条)です。
さらに、一日に何度も電話して営業マンの思うとおりの取引をさせるので、顧客は把握できません(過当取引)。
さらに悪質な業者は、手数料かせぎの為に特定売買というものを行います。特定売買とは、直し(既存の建玉を仕切った同じ日にこれと同一のポジションの建玉を行うこと)、途転(既存の建玉を仕切ると同日に反対のポジションの建玉を行うこと)、日計り(新規に建玉を行い、同一日内にこれを仕切ること)、両建(売りと買いを両方建てること)、不抜け(取引によって各目的には利益が出ているものの当該利益が委託手数料より少なく差引損になるもの)のことを言いますが、無意味な売買で手数料かせぎ以外の目的はありません。又、途中で止めたいというと、今やめると損が確定すると言ってやめさせてくれません。
更に向い玉という手も使います。証券会社は、会社が自分で売買することを禁じられていますが、先物業者は、自分でも売買できることになっているので、お客が売った後で自分は買い、お客が買った後で自分は売るという、後出しジャンケンで儲けるのですから、客は損をするはずです。
追い証が次から次へかかり、借金で自殺した人もいます。
Q そんな悪徳業者を、どうして警察や裁判所は放っておくのですか。
A 行政・立法・司法の理解は、弱いと言えます。実体を知らないことと商品の先物取引自体をやめてしまうと、資本主義が成り立たないためで、既に手を出した人は内容証明で、もう取引を終了させると通知し、先物取引に詳しい弁護士に相談することです。
熱心な弁護活動で救済される例も沢山あります。
Q 私の友人の場合、取引が終了してから3年以上経過しているのですが、大丈夫でしょうか。
A 時効は、不法行為による場合は3年(債務不履行による場合は別)ですが、民法724条は、不法行為の時効の起算点を「損害及び加害者を知りたる時」としており、加害行為が不法行為であることをあわせ知ったことを意味するので、多くの場合、弁護士に相談した時から3年になります(神戸地尼崎支部平11.9.14)。