一 公道に出るために他人の私道を通らざるを得ない人に対して、私道の所有者がその通行を妨害して争いになることがあります。その動機としては、所有者がその私道を自分の宅地や駐車場等として使おうとして他人の通行を禁止したり、あるいは、私道として所有していても一銭にもならないので隣地の人に高く買い取ってもらいたいため、嫌がらせに隣地の人の通行を妨害するようなこともあります。
二 私道といっても道路であることに変りはありませんので、誰でも自由に通行できそうに思われますが、法律的には逆で、私道は私人の所有物であるため、所有者の承諾なしに他人が勝手に通行できないというのが原則なのです。では、私道所有者の一方的な通行妨害に従わなければならないのでしょうか。
三 公道に出るために他人の私道を通らざるを得ないような人は、多くの場合、その私道に対して何らかの通行権をもっているものです。法律では、その通行権として、囲繞地通行権、通行地役権、契約による通行権の三つを定めており、このほか裁判例で、通行の自由権というもの等が認められています。通行権が認められる場合には、通行権者は裁判所に訴えて、通行妨害を排除してもらうことができます。
四 囲繞地通行権というのは、公道に直接通じていない袋地の所有者がその袋地を囲んでいる他人の土地を、その所有者の承諾を得ないで通行し、公道まで出られる権利をいいます。この権利は隣接する土地の有効利用を図るために法定されたもので、どういう場合に認められるかは民法に定められています。囲繞地通行権により、建築確認に必要な幅員の通路の通行権が認められることもあります。
五 通行地役権というのは、当事者間の契約により設定される、他人の土地を自分の土地の通行のために使用でき、これを第三者にも主張できる強い通行権です。裁判例では分譲地の道路などでこの権利が認められることが多いようです。又、通行する人が道路を開設し善意なら10年以上、悪意なら20年以上経ったときは時効による通行地役権が認められることもあります。
六 契約による通行権というのは、賃貸借とか使用貸借等の契約による通行権です。
七 通行の自由権というのは、私道のうち建築基準法による道路位置指定を受けたものやみなし指定道路(いわゆる42条2項道路)について、開設済みの通路部分の通行が妨害された場合に、隣接者などその利用が日常生活上必須である人に認められる権利です。(なお、このような道路については、役所から注意してもらうよう、役所に働きかけるという方法があります)。
以上のような通行権が認められない場合は、私道所有者による通行妨害を甘受せざるを得なくなります。