稲井法律事務所

ご質問・ご相談

受託者を社団法人とする場合と停止条件附にする場合のメリット・デメリット

Q 先生のお話で実際に認知症になってから後見人を選ぶのでは後見人の費用もかかるし、出損に裁判所の許可が必要なので、孫への小遣等否定されるし、原則として不動産の処分ができない等で、不便なことがよく判りましたから認知症になる前に家族信託契約をしておくことが有用ということはよく判ったのですが、高齢者にその話をするとほとんどの人が自分は認知症になどならないと言って受け入れてくれないのですが、どうしたら良いですか。
A 高齢者の皆さんは過去に活躍されたので認知症になどならないという気持ちはよく解ります。しかし日本は世界一の老齢国で2040年になると2026年には65歳以上の5人に一人が、そして85歳以上では55%の人が認知症になると言われています。そこで対策として家族信託の受託者を社団法人にして高齢者が理事長になり息子や娘が副理事長になる方法①と家族信託の効力が医師から認知症の診断書を貰ったときから始まるという停止条件付の契約の締結②があります。
Q どちらも実際に認知症になるまで自分の判断が大事にされるという方法ですね。その二つの方法のメリット・デメリットを教えて下さい。
A 受託者を社団法人にするメリットは受託者の能力喪失・死亡のリスクがない、定款自治によって自由度の高い議決権割合や後継者設計が可能です。一方デメリットとしては設立時に出資金(不動産賃貸の所得税や設立手続き費用)として20~30万円の費用がかかることと毎年の法人住民税がかかることがあげられます。
Q 停止条件附の場合は?
A メリットとして社団法人の場合と比較して当初のコストがかからないことがあげられますがデメリットとして条件成就(実際に認知症になること)のタイミングがわからないためその対策(認知症になったら不動産の信託登記をすることや銀行に信託口座を設定する)ために信託とは別に任意後見契約を締結し認知症になったときは本人は手続ができないので任意後見人に手続きを行って貰う必要があります。任意後見人になるとき裁判所の手続が必要で、毎月一定の費用を払わねばならないのでこうした手続きを好ましくないと思うと受託者を社団法人にする方法が採られることになります。
Q よく判りました。
A 双方のメリット・デメリットをよく考えてどちらにするか選択して下さい。こうした家族信託はきっとあなたのお役に立つと思います。