稲井法律事務所

ご質問・ご相談

緊急事業承継

Q 取締役が一人しかいない株式会社で、その取締役が急死してしまい、会社が混乱状態にあります。どうしたよいでしょうか。
A 会社を経営する権限があるのは取締役ですので、早急に株主総会を開催して取締役を選任する必要があります。
Q 亡くなった取締役が全株式あるいは議決権の過半数に相当する株式を所有していた場合にはどうなりますか?
A その場合には、原則として、相続人の協力がない限り、株主総会が開催できませんので、相続人に連絡を取って、誰が株主を相続するか確認した上で株主総会の開催に協力を求めることになります。但し、相続人が相続放棄をするか否かを熟慮したり、熟慮した末に相続放棄した場合には、故人の株式の承継者が数ヶ月以上、決まらない場合が出て来ることになります。
Q 相続人全員に協力してもらって、相続開始後の早い段階で株主総会の開催に協力してもらうことはできますか?
A そのように協力してもらうことは可能ですが、相続人が株主権の行使により取締役選任の手続に関与してしまうと相続放棄が認められなくなる可能性がありますので、(東京地裁平成10年4月24日判決、判例タイムズ987号233頁)、注意が必要です。
Q 相続人全員が相続放棄をしてしまった場合には、株式の承継者はどうなるのですか?
A 利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)の申立てにより、家庭裁判所が選任した相続財産管理人が家庭裁判所の許可を得て株式を処分した場合に承継者が定まることになります。
Q 長い間、取締役がいない状態では、会社経営に支障が生じますが、何か手段はありませんか?
A 利害関係人の申立てにより、裁判所が「一時代表取締役の職務を行うべき者」を選任することができますので、その制度を利用して、仮の代表取締役を選任してもらいます。故人の株式の承継者が決まり、株主総会決議により新しい取締役が選任されるまでの間、仮の代表取締役が職務を行います。
Q 新たな取締役もしくは仮の代表取締役が選任されるまでの間に、会社の実務上のことを行ってしまうのは問題がありますか?
A その行為が民法上の事務管理として責任を問われない場合もあり得ますが、新たな取締役の意向が不明な段階ではリスクがあると言わざるを得ません。金融機関からの融資の返済や従業員に対する給与の支払い、取引先との連絡や代金の支払い等、急を要する件は多々あると想定されますが、それぞれに事情を話して、理解と協力を得ることが重要です。
Q 個人の株式の承継者が会社の経営に関心がなく、株式を保有する意向がない場合には、会社で当該株式を譲りうけることはできますか?
A 譲り受けることは可能ですが、有償で取得する場合には、株主総会の決議等の自己株式の所得の手続を行う必要があります。また、新たな取締役など会社関係者が個人として、当該株式を譲り受けるという方法も考えられます。
Q 個人の株式の承継者が株式を保有する意向がある場合には、会社は当該株式を取得することは出来ないのでしょうか?
A 株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限ります。)を取得した者に対し、当該株式を会社に売り渡す事を請求することができる旨の定款の定めのある場合には、これに従い、一般承継者に当該株式の売渡しを請求することができます。
Q その旨の定めがない場合には、そのような請求はできないのですか?
A できません。但し、会社が相続その他の一般承継があったこと等を知った後であっても、請求前に定款の定めを設けて、そのような請求をすることは可能です。なお、一般承継者に対する当該株式の売渡しの請求は、当該株式会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から一年が経過するまでにしなければなりません。