稲井法律事務所

ご質問・ご相談

遺留分対策

Q わが社は建設業ですが、私がいい年になってきたので、そろそろ長男に事業承継したいのですが、株の相続は、相続人平等の均等相続ですと社長業は出来ないので、遺言を書きたいと思いますが、障害となるのが他の相続人の遺留分です。遺留分制度は違憲だという話を聞きましたが、本当でしょうか。私には三人の息子がいて、妻は死亡していますので、各人の遺留分は全財産の六分の一です。
A 戦後、民法が改正されたのが、昭和22年12月22日ですが、遺留分の規定1028条以下は戦前の家制度の名残りで、その家から食いっぱぐれを出さないようにする目的だといわれます。一方、憲法29条は、①財産権は、これを侵してはならない。②財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定める、とあり、遺留分は公共の福祉と関係のない制限で侵してはならないという説です。しかし、未だ最高裁のこの問題に関する判例がないので対策が必要です。
Q どんな対策がありますか。
A まず、①生命保険制度を利用し、遺言者が死亡したとき、遺留分を請求される人を受取人とする方法です。この保険金で遺留分を払うのですが、保険金は税法上、一人につき500万円以上ですと課税されますが、民法上は請求者の固有の権利で相続財産でないとされています。②次に用紙を沢山作ることです。税法上は沢山いても一人(実子がいない場合は二人)だけしか基礎控除の計算に入りませんが、遺留分の場面では、全員に相続権があり、必然的に遺留分の額も少なくなるということです。③次に株価が安いうちに承継者に売っておくという方法も考えられます。④次に考えられるのは、承継者の寄与分として、これこれの貢献をして、それが〇〇の財産の増加につながったと遺言に明確に書くことです。⑤最後に経営承継円滑化法の遺留分に関する民法の特例を利用する方法があります。
 推定相続人全員の合意で、㋐自社株式、事業用資産の価額を遺留分算定基礎財産から除外する(除外合意)。遺留分算定基礎財産に参入する自社株式、事業用資産の価額を合意時の時価に固定する(固定合意)で、この特例を利用するには、㋐中小企業者であること、㋑除外合意又は固定合意の時点で、3年以上継続して事業を行っている非上場企業であること、㋒先代経営者が、過去または合意時点で会社の代表者であること、㋓後継者が合意時点で会社の代表者であること、㋔後継者が、先代経営者からの株式取得によって議決権の過半数を保有していることb、㋕後継者は、合意した日から一ヵ月以内に「遺留分に関する民法の特例に係る確認申請書」に必要書類を添付して経済産業大臣に申請し、その確認を受けて一ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てを行うこと、が必要であり、計画的に行う必要があります。