稲井法律事務所

ご質問・ご相談

遺産相続手続きの期限

Q 遺産相続の手続はいつまでにする必要がありますか。
A 遺産相続の一般的な手続としては、主なものとして、①相続放棄と限定承認は、3ヶ月以内、②相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内と定められており、③遺産分割の手続については期限の定めはありません。 死亡届等の行政上の手続や、民事上の契約に基づく死亡届や随伴する手続、死亡に伴う生命保険・退職手当・損害賠償金等の給付金の請求手続等はそれぞれについての期限の定めや事項の規定等によります。

Q 相続放棄について説明して下さい。
A 民法第915条は「相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる」と定めています。そして、相続人がこの期間内に限定承認又は相続放棄をしなかったときは単純承認したものとみなされます。したがって、相続の放棄をしたい人は、自分が相続人となったことを知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の手続をする必要があります。

Q 10ヵ月以内に相続税の申告をしなかったらどうなりますか。
A 相続税を支払う必要のある事案では、期限内に申告をしなければ、本税の他に、無申告加算税や延滞税が付加されます。又、優遇措置である配偶者の税額軽減の特例や、小規模宅地の特例措置、物納・延納等が認められなくなります。相続税を支払う必要のある事案というのは、遺産額から負債額と葬儀費用を差し引いた金額から更に基礎控除額(平成27年以降は300万円+法定相続人数×600万円)を差し引いてプラスの額になる相続案件をいいます。なお、相続税の関係では生命保険金や死亡退職金はみなし相続財産とされ(但し、それぞれ、法定相続人数×500万円が控除されます)、法定相続人の中に養子が含まれている場合は計算式が若干変更になります。相続税を支払う必要のない事案では、相続税の申告は不要です。

Q 申告期限内に遺産分割を行うことができなかったときでも優遇措置を受けられますか。
A 期限内に相続税の申告書を提出し「期限後3年以内の分割見込書」(3年を超えるときは追加書面が必要)を添付すれば、分割出来た時点で配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例措置等を受けることが可能です。しかし、物納と延納については、当該物件(担保物件)の期限内分割が必要です。

Q 遺産分割はいつまでにすればよいのですか。
A 相続税の申告の関係では早いに越したことはありませんが、相続税の関係を度外視すれば、何十年後でもよいことになります。しかし、いつまでも放置すると、遺産である個々の財産について消滅時効により権利が消滅したり、第三者に権利を時効取得されたりする危険があります。又、遺産を相続したと僭称する者がいる場合には、放置すると、知った時から5年又は相続開始の時から20年経つと返還請求権が時効により消滅してしまうことがあり得ます。