Q 所有者不明の土地・建物が社会問題化している聞きました。
A 不動産登記簿上、所有者が直ちに判明しない場合には、所有者を探索するために戸籍等の収集や現地への訪問等が必要になるなど、時間や手間、費用がかかります。土地・建物の使用や取引に支障が出て国民経済に損失を生じさせるほか、管理されないまま放置されて、荒廃や建物の老朽化等、周辺環境を悪化させる問題が顕在化しています。
Q この問題に対応するために民法が改正されたと聞きました。
A その通りです。不動産所有者が不特定または所在不明になるのを予防するために、①相続登記、②所有者の氏名・名称または儒所が変更されたときの変更登記の各申請が義務化されました。正当な理由なく申請を怠ると過料に処されます。
Q 不動産所有者が不特定または所在不明になった場合への対応はありますか?
A 利害関係人の請求により、裁判所が、所有者不明の土地・建物またはその共有持分を対象として、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分をすることができる制度が新設されました。
所有者不明土地管理人は、所有者不明土地・建物について、①保存行為、②性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為をすることができるほか、裁判所の許可を得て、これを売却することができます。
Q 不動産の共有者が不特定または所在不明の場合にも、この管理人制度を利用しない方法はありますか?
A その場合、非訴事件手続により、不明共有者以外の共有者全員の同意により共有物に変更を加え、または不明共有者以外の共有者の持分の過半数により管理に関する事項(形状または効用の著しい変更(抵当権設定等)を伴わない変更を含む。)を決することができるとされました。
Q 不動産の共有者が不特定またはしょざう不明の場合に当該共有者との共有関係を解消するにはどうしたら良いのでしょうか?
A 改正民法では、申立人である共有者を当事者とし、不明共有者を名宛人として、それ以外の共有者は当事者とも名宛人ともしない裁判により、不明共有者の不動産の持分を他の共有者が取得することが可能となりました(2人以上のときは、各共有者は、所在等不明共有者の持分を請求した各共有者の持分の割合で按分した分をそれぞれ取得します)。申立人である共有者が不明共有者の持分を取得すると、不明共有者は、その持分に代えて、持分の時価相当額支払請求権を取得します。不動産を共同相続し、遺産共有している相続人の中に不特定または所在不明の相続人がいる場合にも、相続開始のときから10年を経過していることを要件として、不明相続人の遺産共有持分について、この仕組を利用できます。
また、共有者が不明共有者の持分を取得するのではなく、不明共有者以外の共有者の全員が特定の第三者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として、不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判を求めることが可能になりました。やはり、相続開始のときから10年を経過していることを要件として、不明相続人の遺産共有持分について、この仕組を利用することが可能です。この場合、不明共有者の持分は当該特定の者に対し、持分の時価相当額支払請求権を取得します。
Q これらの改正法の施行はいつですか?
A 令和5年4月1日に施行されています。但し、住所変更登記未了への対応の規定は令和8年4月までに施行されます。