稲井法律事務所

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区分所有権法の改正要綱

区分所有権法の改正要綱

Q 区分所有権法が改正されると聞きました。
A 令和6年1月に法制審議会区分所有法制部会で要綱案がまとめられました。近く国会に法案が上程される予定です。
Q 改正の概要を教えてください。
A 区分所有建物の(1)再生と(2)管理のための新たな方策が内容となっており、(1)では、①建替え決議の円滑化、②建物の更新(一棟リノベーション)、③区分所有関係の解消を、(2)では、①集会決議の円滑化、②区分所有者に管理上の問題がある場合の財産管理制度、③共有部分の変更決議の多数決要件の緩和等を規定しています。
Q 【再生】のため新たな方策の具体的内容を教えてください。
A ①建替え決議の円滑化では、基本的な多数決割合は現行の区分所有者及び議決権の各五分の四以上を維持しした上で、反対者の権利に対する割合を強めることを正当化できる客観的事由(以下のいずれかの事由)がある場合に限り、多数決割合を四分の三以上に緩和することとされました。
(Ⅰ)自身に対する案税制に係る法令等の基準に適合していないこと
(Ⅱ)火災に対する安全性に係る法令等の基準に適合していないこと
(Ⅲ)外壁等が剥離・落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあること
(Ⅳ)給排水等設備の損傷・腐食当により著しく衛生上有害となるおそれがあること
(Ⅴ)いわゆるバリアフリー化の促進に関する法令等の基準に適合していないこと
また、①建替え決議があったときは、決議に賛成した各区分所有者から賃借人に対し賃借権の消滅請求ができる一方で、賃借人は適正な補償金の支払いを受けることができるまでは専有部分の明渡しを拒むことができるとされました。②建物の更新では、建替え決議と同様の多数決要件により、更新決議ができることとされました。③区分所有関係の解消では、やはり建替え決議と同様の多数決要件により、以下の決議ができるとされました。
(Ⅰ)土地・建物の一括売却
(Ⅱ)建物の取壊し・敷地売却
(Ⅲ)建物の取壊し
Q 【管理】のため新たな方策の具体的内容を教えてください。
A ①集会決議の円滑化では、所在等が不明な区分所有者について、裁判所の除外決定を得て、決議の母数から除外することが可能となり、また、普通決議や共用部分の変更決議等については出席者による多数決で足りるとされました。②区分所有者に管理上の問題がある場合の財産管理制度では、まず、所在等が不明な区分所有者に特化した財産管理制度が設けられ、管理人には専有部分のみならず同区分所有者が専有利用していた共用部分やその上にある動産についての管理権限やその者に代わる集会での議決権行使が認められました。また、区分所有者の専有部分の管理に特化した財産管理制度、共用部分の管理に特化した財産管理制度がそれぞれ設けられ、前者の場合には管理人が専有部分や専有利用されているベランダ等のゴミや動産類を撤去できるとされ、後者の場合には管理人は外壁の剥離・落下やゴミの放置等の共用部分の管理不全に対応できるとされました。③共用部分の変更決議の多数決要件の緩和では、区分所有者及び議決権の各四分の三以上とされている現行の多数決要件を、次のいずれかの場合には、各三分の二以上で足りるものとされました。
(Ⅰ)共用部分の設置・保存に瑕疵があることによって他人の権利・利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、その瑕疵の除去に必要な共用部分の変更
(Ⅱ)いわゆるバリアフリー化のために必要な共用部分の変更