稲井法律事務所

ご質問・ご相談

寄与分

Q 寄与分とは何ですか。
A 民法上、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与・貢献をなした共同相続人がある場合に、その者の相続分の算定にあたって寄与に相当する額の増加を認め、共同相続人間の実質的衡平を図る制度が規定されていますが(第904条の2)、その寄与をした共同相続人が受ける利益を寄与分と言います。

Q 「特別の寄与・貢献」とは何ですか。
A 夫婦間の協力義務や親族間の扶養義務等、被相続人との身分関係に基づいて法律上の義務の履行として、社会通念上通常期待されるような程度・範囲に留まらず、それを超える寄与・貢献が「特別の寄与・貢献」です。

Q 具体的にどのような場合に、寄与分が認められますか。
A 条文上、寄与行為の態様として、「被相続人の事業に関する労務の提供」「財産上の給付」「被相続人の療養看護」が例示されていますので、順に説明します。
「被相続人の事業に関する労務の提供」は、審判例では、相続人が家業である農業を手伝った事例が多く、50%の寄与分を認めた事案もあります。他に、養豚業、小売商、医療法人の経営、パンの製造販売等への貢献の事案もあります。

Q 労務提供について対価を受けていても、寄与分は認められますか。
A 対価を受けている場合、原則として認められないとする見解が多いですが、有償で家業の薬局経営に従事していた場合に寄与分を認めた審判例もあり、対価受領の有無で一概に決まるわけではありません。

Q 「財産上の給付」には、どのような態様のものがありますか。
A 現実に金銭を給付した場合のほか、相続人が得た収入で被相続人の生活を支えた場合に、「財産上の給付」として、寄与分が認められ得ます。
「被相続人の事業に関する財産上の給付」の場合、その「事業」は、原則として、被相続人が個人として営む事業であることが必要で、農業、漁業、商業等の事業がこれに該当します。
 但し、被相続人が経営する会社についても、個人企業としての実質や被相続人との経済的な密接性、給付がなされた当時の会社の経営状態・被相続人の資産状況等を総合考慮して、その会社に対する寄与を実質的に被相続人に対する寄与と評価して、20%寄与分を認めた審判例もあります。

Q 「被相続人の療養看護」は、先ほどの話に従うと、民法上の扶養義務の程度・範囲を超えるものでなければ、寄与分として認められないのですか。
A そうです。
 民法上の扶養義務の程度・範囲は明確ではありませんが、①被相続人が痴呆症ないし認知症になり、②通常は家政婦やホームヘルパーを付けるような常時の付添い・見守りが必要である状態(要看護状態)が、③長年続いていたときに、相続人が「療養看護」にあたった場合に、寄与分を認める審判例が多いと言えます。平成19年の大阪家庭裁判所の事案では、約3%の寄与分が認められました。