稲井法律事務所

ご質問・ご相談

遺産の管理

Q 父がなくなりました。母と私を含めた3人の兄弟が相続人になりますが、遺産分割が終わるまでの間、注意しなければならないところはありますか。
A 遺産分割により遺産が帰属するまでの間、遺産は相続人の共有財産となるので、遺産の管理には注意が必要です。
  各相続人は、遺産を相続分に応じて使用することができますが、遺産の管理については①各相続人が単独で行うことができる「保存行為」、②相続分の過半数による「管理行為(利用行為、改良行為)」、③相続人全員の同意が必要な「処分行為」に基づき行うことになります。
  遺産である不動産については、具体的には、相続を原因とする相続人全員を登記権利者とする登記申請、不法占有者に対する妨害排除請求、家屋の修繕が「保存行為」、建物明渡請求権の行使、賃貸借契約・使用貸借の解除が「管理行為」、不動産の売買・担保権の設定、借地借家法の適用のある賃貸借契約の締結、不動産の管理委託が「処分行為」になります。

Q 父が亡くなった後の家賃については誰がもらえますか?
A 遺産分割後は賃貸不動産を単独取得したものが当然に家賃を取得します。相続開始から遺産分割までの賃料は、各相続人がその相続分に応じて取得するというのが近時の判例です。

Q 父の預金は、遺産分割前に相続人単独で払い戻しを受けられますか?
A 預金の払い戻しは、裁判例では、各相続人が相続分の割合に応じて単独で預金払戻請求権を取得するものとされていますが、銀行実務では、相続人全員の同意がないと預金の払い戻しを行わないことが多いと言えます。
  被相続人名義の預金口座の取引記録開示については、相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、相続人単独で求めることができるとした最高裁判例が平成21年1月に出ました。

Q 相続税の納付に関して、気をつけることがありますか?
A 遺産分割協議は数年かかる場合がありますので、その間、相続税の納付で不利益を受けることがないように注意しなければなりません。
  まず、相続税の現金納付が困難で、物納を検討する場合には、物納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して、所轄の税務署長に提出することが必要になります。物納申請期限までに物納手続関係書類を提出できない場合は、物納手続関係書類提出期限延長届出書を提出し、1回につき3か月を限度として、最長で1年まで物納手続関係書類の提出期限を延長することができます。

Q 他にありますか?
A 配偶者が相続人になる場合には、1億6000万円の配偶者控除があり、また配偶者の法定相続分は課税されませんので、1億6000万円と法定相続分のいずれか高い方までは非課税となります。
  この制度は、相続税の申告期限までに遺産分割協議(抽象的に「配偶者は法定相続分を取得する」という協議でも可)がまとまらないときは利用できませんが、その期限までに遺産分割が出来ない理由を税務署に届け出ておけば、申告期限から3年間は利用できますし、更に、3年経過する時に税務署の承認を受けておけば、その後でも利用できます。