稲井法律事務所

ご質問・ご相談

養子縁組と相続

Q 養子縁組と相続

Q 養子縁組により、相続関係はどうなるのでしょうか?
 養子縁組は人為的に親子関係を発生させる制度ですので、養子縁組により当然に養親と養子の間には法定血族関係が生じることになります。
 従って、養親が亡くなった場合、養子は実子と共に第一順位の法定相続人となり、養子が亡くなった場合、養親は第二順位の法定相続人となります(第一順位は養子の子)。
 また、養子縁組により、養子と養親の血族との間にも法定血族関係が生じますので、養子の六親等以内(養親の五親等以内)の者は親族になりますし、養子が養親の血族の法定相続人(代襲相続人)になる場合もあり得ます。
 一方で、養親と養子の元々の血族との間には法定血族関係は生じず、縁組後に養子に生じた血族に限り、養親及びその血族との間には法定血族関係が生じます。例えば、縁組前に生まれていた養子の子と養親の間に法定血族関係は生じませんが、縁組後に生まれた養子の子(養親の孫)との間には法定血族関係が生じることになります。

Q 養子縁組により養子と実親の相続関係はどうなるのでしょうか?
 普通養子縁組の場合、実親子間の親族関係は終了せず、二重の親子関係が併存しますので、実親が亡くなった場合、養子は実親の子と共に第一順位の法定相続人となり、養子が亡くなった場合、実親は養親と共に第二順位の法定相続人となります。
 他方で、養子が実親との法的な親子関係を解消し実子と同じ親子関係を結ぶ特別養子縁組の場合、実親子間の親族関係は終了しますので、養子が実親(ないしその血族)の法定相続人となることはありません。

Q 養子縁組により養子ができると、相続税が安くなると聞きました。
 相続税は法定相続人の数が多いほど基礎控除額が増えて税負担が軽減されるため、養子縁組により第一順位の法定相続人である子を増やすことは、相続税対策として有効であると考えられています。
 【相続税の基礎控除額】3000万円+600万円×法定相続人の数
 また、法定相続人である子が増えると、被相続人が自ら保険料を負担していた生命保険金や死亡退職金の非課税枠が増加するため節税効果が期待できます。

Q そうすると、養子が多くなればなるほど、その分、基礎控除額が増えて相続税が安くなるのでしょうか?
 養子縁組により親子関係を発生させることのできる子の数に制限はありません。
 しかしながら、相続税法上は、実子がいない場合には二人まで、実子がいる場合には人までに限り、相続税の計算上、法定相続人に含めることができるとされていますので、養子が複数いても、際限なく、相続税が安くなるわけではありません。
 但し、①特別養子縁組による養子や②配偶者の連れ子(特別養子縁組による子を含む。)を養子にした場合、③代襲相続で相続人になった直系卑属である養子(孫と養子縁組していた場合)は実子と見なされ、人数制限は受けません。

Q 遺贈と死因贈与の違いが分かりますでしょうか。
 はい、遺贈は遺言で行う単独行為であり、死因贈与は贈与者と受贈者との間の契約で異なります。

Q よく出来ました。それでは効果はどう違うのでしょうか。

Q 効果は同じなのでは。
 預金債権の場合、それが大違いなのです。預金債権は譲渡禁止となっているのが普通です。そこで死因贈与契約における執行者とされる者が金融機関に対して同債権の払戻請求を金融機関が拒むことは、信義則に反しないと東京地判令3・8・17民事23部判決は判示しています。

Q もう少し詳しくご説明下さい。
 その事例では、①民法554条、1007条2項の通知(遺言執行者が就職した場合、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければいけないこと)をしなかったという事例ですが、同契約の契約書および受贈者と執行者に係る本人確認文書、各原本の提示ならびに同契約の執行者に就任した旨の通知をした上で行った催告時点で金融機関の煩瑣な事務処理および過誤払いの回避の観点から同金融機関が払戻しを拒むことを認めることを認める必要があり、②第1審口頭弁論終結時おいても相続人らに対して行われた訴訟告知の参加的効力は同時点では発生しておらず、受贈者以外の相続人が同契約に従い同預金債権の払戻しを受贈者が受けることを同意したことを直接裏付ける証拠がないという本件事案のもとでは、金融機関が払戻しを拒むことを認める必要があり、③本件事案において死因贈与は同預金を遺贈することが可能であり、死因贈与執行者も受贈者以外の相続人から同意を取るなどの手続をし得たことからすれば、死因贈与契約の執行者に同預金債権の払戻しを認めるべき必要性が高いとはいえず、金融機関による払戻しの拒絶が信義則に違反するということはできない、というものです。

Q わかりました。譲渡禁止の違反ということですね。
 一方遺贈も遺留分侵害の危険があるのではないですか。

 遺贈の場合は、金融機関が払戻しを認めるのが一般で、遺留分による差止めが事前に通知される以外、支払は有効とされています。
 前記判例では、死因贈与契約の執行者が、民法554条、1007条2項に基づく通知を怠っていたので、受贈者以外の相続人らが本件預金についての権利主張する意向があるか否かが不明であるので、帰属主体が受贈者であるということは明白でないとも附言されています。