Q 公正証書で遺言書をつくりたいのですが、心得ておくべきことを教えて下さい。
A 一番大事なことは、意識の確かな間に、早めに作成しておくことです。
意識がはっきりしなくなってから作った公正証書では、その遺言によって不利益を受ける相続人が不服で公正証書は無効だと言い出す恐れがあります。
Q 意識がはっきりしているとは、どのような状態をいいますか。
A 遺言者が遺言の内容を「口授」できることが必要です。口授は「くじゅ」とも「こうじゅ」とも読めますが、公証人の間では「くじゅ」と読まれているようです。
Q 口授とはどうすることですか。
A 口授とは口頭で述べることです。言葉によらないで動作でうなずいたり、それで良いといっただけでは、口授したとはいえません。
遺言者が自分の言葉で、遺言の内容をある程度具体的に述べることが必要です。
Q 遺言者の依頼の趣旨に基づいて、公証人が遺言書の原稿をあらかじめ用意しておく方法は、如何でしょうか。
A 判例によれば遺言者が「物件を特定し得べき程度に於て遺言の趣旨を口授すると共に之が朗読を省略し其覚書を公証人に交付して之に基き物件の詳細なる記載を為すべきことを委託する」のは遺言の趣旨を□授することだといっています(大審院大正8年7月8日判決民録25輯1287頁)。
Q 物件の特定とはどの程度をいうのですか。
A いくつか場所が分かれて不動産を所有している場合、例えば、世田谷のマンションは長男に、目黒の土地は次男にといえば、それでよいわけです。またマンションの部屋であるならば、101号室は長女に、102号室は次女にといえば、よいのです。
Q 遺言者の死亡後に相続人の間で遺言書の効力について争いが起こるのを防ぐには、どうすればよいでしょうか。
A 相続人間の争いを防ぐには、2つの点に注意することです。
まず、遺言者の意識の明確な間に公証人に作成を依頼することです。
遺言の作成は、思い立ってから完成するまで、相当時間を要することがあります。それは遺言者が高齢なため、いろいろ迷われて結論がなかなか出ないからです。弁護士のところへ相談に来られて数ケ月かかり、完成しないまま亡くなった方もあります。ですから入院でもするようになったら、なるべく早く取りかかることです。証人として利害関係のない者2名の立合が必要です。心配ならその内の1名を担当の医師にお願いするのもよいことです。
次に、遺言の内容が相続人の間で不公平にならないこと、少なくとも各相続人の遺留分を侵害しないことです。遺留分とは相続分の2分の1です。兄弟姉妹には遺留分はありません。