Q 遺贈と死因贈与の違いが分かりますでしょうか。
A はい、遺贈は遺言で行う単独行為であり、死因贈与は贈与者と受贈者との間の契約で異なります。
Q よく出来ました。それでは効果はどう違うのでしょうか。
Q 効果は同じなのでは。
A 預金債権の場合、それが大違いなのです。預金債権は譲渡禁止となっているのが普通です。そこで死因贈与契約における執行者とされる者が金融機関に対して同債権の払戻請求を金融機関が拒むことは、信義則に反しないと東京地判令3・8・17民事23部判決は判示しています。
Q もう少し詳しくご説明下さい。
A その事例では、①民法554条、1007条2項の通知(遺言執行者が就職した場合、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければいけないこと)をしなかったという事例ですが、同契約の契約書および受贈者と執行者に係る本人確認文書、各原本の提示ならびに同契約の執行者に就任した旨の通知をした上で行った催告時点で金融機関の煩瑣な事務処理および過誤払いの回避の観点から同金融機関が払戻しを拒むことを認めることを認める必要があり、②第1審口頭弁論終結時おいても相続人らに対して行われた訴訟告知の参加的効力は同時点では発生しておらず、受贈者以外の相続人が同契約に従い同預金債権の払戻しを受贈者が受けることを同意したことを直接裏付ける証拠がないという本件事案のもとでは、金融機関が払戻しを拒むことを認める必要があり、③本件事案において死因贈与は同預金を遺贈することが可能であり、死因贈与執行者も受贈者以外の相続人から同意を取るなどの手続をし得たことからすれば、死因贈与契約の執行者に同預金債権の払戻しを認めるべき必要性が高いとはいえず、金融機関による払戻しの拒絶が信義則に違反するということはできない、というものです。
Q わかりました。譲渡禁止の違反ということですね。
一方遺贈も遺留分侵害の危険があるのではないですか。
A 遺贈の場合は、金融機関が払戻しを認めるのが一般で、遺留分による差止めが事前に通知される以外、支払は有効とされています。
前記判例では、死因贈与契約の執行者が、民法554条、1007条2項に基づく通知を怠っていたので、受贈者以外の相続人らが本件預金についての権利主張する意向があるか否かが不明であるので、帰属主体が受贈者であるということは明白でないとも附言されています。