稲井法律事務所

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家族信託の進め方

家族信託の進め方

Q 日本は、世界一の老齢国であり、2040年になると65歳以上の人が全人口の35%(現在27%)になり、2025年には65歳以上の5人に一人が、そして85歳以上では55%の人が認知症になると言われていますが、どうしたらよいのでしょう。
A 日経新聞に認知症患者の資産が200兆円以上になり凍結されてしまうと出ていましたが、認知症になってしまってからでは、成年後見人を立てるよう家族が申立て、家庭裁判所で後見人を選任(選任まで6ヶ月くらいかかる)してくれますが、後見人は家族以外の第三者ですし、5000万円以上の財産で毎月三万円以上の費用を払わねばなりません。
 又、本人以外の例えば孫へのおこづかいなどは否定されますし、高額の施設への入所金等は認められないことが多いようです。そこで認知症になる前に家族信託の契約を締結する必要があります。

Q どんな制度ですか?
A 
まず、銀行預金は受託者(家族の信頼できる人)が受託口口座を作り、出し入れができるようにします。
 又、信託契約書を締結し、一般的には公正証書にします。信託財産にできるのは、譲渡禁止のない財産で、中小企業の株式や委託者の年金受領権、預金債権は何れも譲渡禁止なので、預金は現金を信託し、前記の信託口口座に入れます。
 又、不動産は信託登記して、信託となったことを借地人や借家人に通知します。信託登記しても財産は実質的に委託者のものですから、贈与税はかかりません。

Q 後見より良い制度だとわかるのですが、普及していないのはどんな障害があるのでしょう。
A 
まず、委託者の人は、まだ自分は大丈夫だから、そんな必要はないと思います。又、家族の中の受託者になる人は管理口座を作り、毎年報告書を提出する等、面倒なことをするのにメリットがないとやりたくないというのが普通です。
 そこで良い方法とは、社団法人を設立し、その理事長は委託者の高齢者がなり、社団法人を受託者にする方法です。そうすれば委託者が元気なうちに方針決定に委託者の意向が反映します。なお、株式会社を受託者にするのは、信託業法で営業信託になってしまうので出来ません。
 受託者のメリットですが、社団法人の副理事長になり、理事長が認知症になったとき昇格し、毎月一定の急を出して貰い、又、委託者が死亡したときの財産の帰属権利者になるよう信託契約書に書き入れておきます。
 以上の方法で二つの障害は克服するのですが、こうした対策を立てて、財産が凍結することのないようにしたいと思います。