稲井法律事務所

ご質問・ご相談

「まだらぼけ」の人は遺言できないか?

Q 私の父は最近ぼけてきて「まだらぼけ」状態です。それでも遺言できるのでしょうか。
A 「まだらぼけ」とは俗語でしょうが、老人の意識がはっきりしているときと、ぼけているときが、交互に起こる状態をさすようです。遺言者の意識がはっきりしている時なら遺言はできます。

Q 後で問題は起こらないでしょうか。
A その遺言で利益を受ける相続人(例えば長男)に対し、不利益を受ける相続人(例えば長男以外の子)から、その遺言は無効だという裁判を起こされる恐れはあります。

Q 例えばどういう形でですか。
A 長男に全財産を相続させると遺言すれば、長男以外の相続人は、まず遺留分減殺請求権を行使するのが普通です。しかし子の場合は遺留分は相続分の2分の1ですから、それでは満足しない相続人は遺言そのものを無効だと主張するでしょう。遺言が無効となれば相続分にしたがって遺産分割協議をすることになり、遺留分の2倍の額を相続できるからです。

Q 相続人の間で争いのおきるのを防ぐには、どうしたらよいでしょうか。
A 1つの方法としては、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言にしておくことです。

Q 自筆証書遺言は、どうしてよくないのですか。
A 自筆証書による遺言は、自分で書けばよいのですから簡単に作れますが、遺言したとき遺言者はぼけていて、そのような遺言が書けなかった筈だと争われると、意識は明確だったことを立証するのはなかなか難しいことです。なぜなら誰も見ていないので、証人になる人がいないのが普通だからです。

Q 公正証書遺言にしておけば大丈夫ですか。
A 公正証書遺言にすれば絶対争われないというわけではありませんが、公証人や2人の証人の立ち会いのもとに口授するのですから、かなり防げることは確かです。争いになればこの人達が遺言するところを見ていたので、その様子を法廷で証言してくれるからです。

Q やむをえず「まだらぼけ」になってから遺言するとすれば、どんなことに気をつければよいでしょう。
A 公正証書遺言を作ることを医師に話して、遺言者の意識がはっきりしていて言葉をはなせることを確かめてもらって、その日時や医師の説明を記録しておくことは、後で役に立つでしょう。証人の2人は友人や知人ではなく、弁護士とか税理士とか、裁判になったとき証言することをいやがらない人に頼むことも大切です。
 裁判所の判例を見ても、公正証書遺言でも無効だとされている例がいくつかあります。「まだらぼけ」になってからではなく、もっとはやい時期に、誰が見ても意識がはっきりしていたことが争いようがない状態で、遺言しておくことが一番です。