相続登記の義務化
Q 相続登記の申請が義務化されると聞きました。
A 不動産登記法が改正されて、相続により不動産の所有権を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務付けられました。
Q 罰則があるのですか?
A 正当な理由がないのに、その申請を怠ったときは10万円以下の過料に処することとされています。
Q 相続登記の申請が義務化されたのは、どういう理由からでしょうか?
A 所有者が不特定または所在不明の不動産が発生するのを予防するためです。不動産所有者が不明の場合には、所有者を探索するために戸籍等の収集や現地への訪問等が必要になるなど、時間や手間、費用がかかります。殊に土地の場合には、その使用や取引に支障が出て国民経済に損失を生じさせるほか、管理されないまま放置されて周辺環境環を悪化させるという問題が顕在化していました。
Q 不動産登記法において、相続登記申請の義務化と同じ趣旨で、他に義務化されたものがあるのですか?
A 所有者が所在不明の不動産が発生するのを予防する見地から、不動産の所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときはその変更があった日から2年以内にその変更登記の申請をすることが義務付けられ、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5年以下の過料に処することとされました。
Q 不動産の共有者が不特定または所在不明の場合にも、同じ問題が生じ得るのではないですか?
A その通りです。その場合、共有不動産の利用が阻害されることを防止するため、非訟事件手続により、不明共有者以外の共有者全員の同意により共有物に変更を加え、または不明共有者以外の共有者の持ち分を過半数により管理に関する事項(形状または効用の著しい変更を伴わない変更を含む。)を決することができるとされました。
民法の改正により、共有物の変更のうちその形状または効用の著しい変更を伴わないものについてはこれを共有者全員の同意を要する「変更」から除外し、持分の過半数で決することができる「管理に関する事項」として扱うこととされました。不明共有者がいる共有物については、不明共有者を除いてこの考え方を妥当させたものです。
Q 不動産の共有者が不特定または所在不明の場合に、共有関係を解消するにはどうしたら良いのでしょうか?
A 改正民法では、申立人である共有者を当事者とし不明共有者を名宛人として、それ以外の共有者は当事者とも名宛人ともしない裁判により、不明共有者の不動産の持分を他の共有者が取得することが可能となりました。申立人である共有者が不明共有者の持分を取得すると、不明共有者は、その持分に代えて、持分の時価相当額支払請求権を取得します。
又、不動産を共同相続し、遺産共有している相続人の中に不特定または所在不明の相続人がいる場合にも、相続開始の時から10年を経過していることを要件として、不明相続人の遺産共有持分について、不明共有者の持分を取得する仕組を利用することが可能となりました。
Q これらの改正法の施行はいつですか?
A 民法や非訟事件手続法の改正部分は公布の日(令和3年4月28日)から2年以内とされています。
不動産登記法の改正部分の内、相続登記の申請の義務化の規定は公布の日から3年以内、住所変更登記未了への対応の規定は公布の日から5年以内とされています。