事業承継税制について
日本国内の会社は、中小企業が99%であり、1999年から2015年にかけ、100万社減少し、2030年までに170万社の中小企業が無くなり、60万人の雇用が失われると言われています。
そこで、政府は、事業承継における税制を優遇して後継者が承継しやすいように制度を作っています。
1 相続時精算課税制度
60才以上の社長から20才以上の子である推定相続人及び孫が贈与を受けた場合、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に所轄の税務署長に申告書にその旨の届出を添付してなされます。
贈与税より相続税の方が安いということ、納税が後で良いという点にメリットがあります。
2 中小企業者の土地の相続税評価
昭和58年の租税特別措置法によって、相続財産中の事業用の土地または宅地につき、200㎡までの部分については、通常の相続税財産評価基準による評価額から50%ないし70%だけ引き下げた評価額によって相続税の課税価格の計算をすることになりました。
3 特定事業用宅地の評価減
被相続人の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐輪場業及び准事業は除かれる)の用に供されていた宅地等で、次の要件のいずれかを満たす被相続人の親族が、その宅地等を取得した場合の宅地を特定事業用宅地といいますが、その宅地等を取得した個人のうちに1人でも次の要件を満たす者がいればその宅地等の全体が80%減額の対象となる。
ア 相続開始から相続税の申告期限までに、その宅地等の上で営ま れていた被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限までに引き続きそ の宅地等を有し、かつ、その事業を営んでいること。
イ 被相続人と生計を一にしていた親族が、相続開始から相続税の 申告期限(その親族が申告期限前に死亡した場合には、その死亡 の日)まで引き続きその宅地等を有し、かつ申告期限まで引き続 き自己の事業の用に供していること。
4 相続税の納税猶予(滞納)
延納許可の要件は次のとおり
①申告による納付税額または更正決定による追徴税額が10万円を超えること。
これは、相続人各人ごとに、また申告、期限後申請、修正申告、更正、決定によるそれぞれの確定税額について判定する。
②納税期限までに、または、納付すべき日に金銭で納付することを困難とする事由があること。
③必要な担保を提供すること。
④延納をしようとする相続税の納付期限または納付すべき日までに法律で定められている事項を記載した延納申告書に担保提供に関する書面を添えて所轄税務署長に対して延納申請書を提出すること。
5 自己株式の評価
非上場会社の株式の評価方法は、純資産で計算する原則的評価方法(高い)と配当還元方式(安い)とあり、同族株式の1人(配偶者、直系血族、兄妹姉妹、一親等の姻族を含む。これら個人が25%以上を保有する会社を含む。)が25%以上の議決権を保有している場合、中心的な同族株主が、25%以上いることになりますが、この場合、原則的評価方式を用います。
従って、同族以外で構成する別会社を形成し、この会社がある程度株を持つことにより、中心的な同族株主がいないことになり、配当還元方式で計算されることになります。これは制度による優遇というより相続対策による税額軽減といえるでしょう。