稲井法律事務所

ご質問・ご相談

中小企業金融円滑化法終了後の対策

Q 中小企業金融円滑化法が、平成25年3月末に最終期限を迎え、終了となりました。
  今後は、中小企業の事業再生を支援するためにどんな手段がありますか?

A 中小企業金融円滑化法では、中小企業等の債務者が金融機関に対して、借入金返済の負担軽減の申込みを行った場合に、金融機関に、できる限り当該貸付けの条件変更等の措置をとる努力義務を課していました。
  中小企業金融円滑化法が終了したことにより、金融機関の努力義務はなくなりましたが、貸付けの条件変更等に一切応じなくなるという事ではなく、債務者は、金融機関に条件変更等の申込みをすることができます。
  一方、各種再生手続きを利用して、経営改善指導を受けたり、事業再生計画を策定したりすることによって、より具体的・効率的な事業再生を目指すことが可能です。

Q どのような再生手続がありますか?
A まず、全国47都都道府県で商工会議所等に設置された中小企業再生支援協議会(東京都では東京商工会議所に設置されています)の支援スキームがあります。
  この支援スキームでは、事業者が相談の上、外部専門家を含めて編成された個別支援チームによる①事業再生計画の策定支援や ②債権者整理を受けることができます。
  このスキームによることのメリットは、手続開始の段階での事業再生計画の策定が要求されていないこと、中小企業再生支援協議会に対する報酬が発生せず、事業者の資産等の査定(デューデリジェンス)の費用も補助が受けられることで、そのため、利用しやすい手続になっています。

Q より積極的な支援を行う再生手続はありますか?
A 地域経済活性化支援機構(REVIC)の支援スキームでは、事業再生計画の策定支援や再計者調整のほか、債権の買取り、事業者に対する出資・融資、専門家の派遣による経営改善のための助言・指導を行っています。
 東日本大震災事業者再生支援機構も同様の支援を行っています。

Q 中小企業再生支援協議会と地域経済活性化支援機構は、連携しているのですか?
A 両者は、平成24年4月に内閣府、金融庁及び中小企業庁が策定した「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」を踏まえて、相互に案件を仲介し、機構が協議会に専門ノウハウの提供等に係る枠組みを構築し、連携の強化を図っています。
  具体的には、協議会を通じた調整が困難な案件(県境を超える広域に債権者が存在する中小企業の案件や公的機関が債権者となっている無案件等)や、病院、学校のように協議会の支援対象にならない案件については、機構が協議会と連携・協力し、対応しています。

Q 裁判所が関わる再生手続はありますか?
A 負債総額が10億円未満の場合には平成25年12月から新しい運用(事前調整型運用)が開始された簡易裁判所の特定調停の手続を利用することができます。
  この場合、特定調停の申立前に、事業再生計画を作成し、金融機関に説明し調整をする等、事前の準備を行います。

Q 特定調停の手続のメリットは何ですか?
A 中小企業再生支援協議会及び地域経済活性化支援機構の支援スキームでは、事業再生計画に債権者全員の同意が必要になりますが、特定調停では、裁判所は一部の債権者が同意しない場合に、職権で民事調停法第17条の「調停に代わる決定」をすることができます。
 從って、最初から特定調停を申立てることもできますが、まず、協議会の支援スキームを利用して、そこで、債権者全員の同意が得られない時に特定調停を申立てる、という方法が考えられます。