稲井法律事務所

ご質問・ご相談

新会社法における有限会社の扱い

Q 商法が改正されて会社法となり、平成18年5月から施行されるそうですが、有限会社はどうなりますか。
A 新会社法において、現行の株式会社及び有限会社が、「株式会社」という企業形態に一本化されます。
 新会社法の施行に伴い、有限会社法は廃止され、新たに有限会社を設立することはできなくなります。

Q どうして、そのように一本化されるのですか。
A 我が国の株式会社の内、98%超を占める中小企業の経営実態と法的規律の不均衡を是正するため、新会社法では、旧法での株式会社の規整を大幅に緩和し、会社が、有限会社と同様の規整から始まり、その成長に従って、機関設計を選択できる制度を実現させました。
 このため、新会社法施行後には、「有限会社」という企業形態を残存させる必要がなくなり、有限会社法は廃止されることになりました。

Q では、既存の有限会社はどうなりますか。
A 既存の有限会社は、商号中に有限会社という文字を用いる「株式会社」として存続します(このような旧有限会社を「特例有限会社」と言います)。
 特例有限会社には、廃止される有限会社法に特有の規定を考慮して、新会社法の特則(一般に「整備法」と言われます)が適用され、社員は株主、持分は株式、出資1口は1株と、それぞれみなされます。
 しかし、そのための定款変更や登記申請等、特段の手続は、原則として必要ありません。
 但し、旧有限会社の定款に、議決権・利益配当・残余財産分配につき別段の定めがある場合(その定めが属人的なものである場合を除きます)には、そのような定めがある種類株式とみなされ、新会社法施行日から6ヶ月以内に、種類株式に関する登記をしなければなりません。
 この登記申請手続を怠ると、特例有限会社の取締役等が、百万円以下の過料に処せられ、また、従来の定款の定めを生かすには、特別決議により、種類株式についての定款変更をしなければならなくなります。

Q 出資1口が1株とみなされるということですが、それを譲渡することはできますか。
A 特例有限会社においては、株主以外の者に株式を譲渡する場合には、会社の承認が必要ですが、株主間の譲渡の場合にはその承認は不要です。

Q 取締役、監査役はどうなりますか。
A これまでと同様に、取締役は置かなければならず、監査役を置くことは任意で、それぞれの任期に制限はありません(監査役の監査権限も会計監査権限に限定されます)。
 また、廃止される有限会社法の下で、法定の機関として存在しなかった取締役会、監査役会、会計参与、会計監査人、委員会を置くことはできないとされました。

Q 決算はどうなりますか。
A 会社法施行日前に到来した最終の決算期にかかる計算書類、これらの付属明細書の作成、監査及び承認の方法はこれまでと同様ですが、施行日後に決算期が来る場合、計算書類として、株主持分変動計算書を作成しなければなりません。
 また、特例有限会社には、決算公告の義務は課されません。

Q 特例有限会社を株式会社に移行させるにはどうしたらよいですか。
A 定款を変更して、商号中に「株式会社」という文字を用いる商号に変更します。
 定款変更の決議から、本店所在地においては2週間以内、支店の所在地においては3週間以内に、特例有限会社について解散登記、商号変更後の株式会社について設立登記をします。
 その他の手続は要りませんし、最低資本金制度が撤廃されましたので、増資の必要もありません。