稲井法律事務所

ご質問・ご相談

継続的供給契約における供給ストップ

Q 世の中が不況になってくると、相手方の信用不安で、継続的供給契約が締結されていても、供給をしてもよいのかどうか迷うことがあります。
 供給をストップするのはどの辺が限界点でしょうか。

A 学説では、不安の抗弁権といって、双務契約で反対給付が危ぶまれるようなとき、反対給付の実行ないしは担保提供まで自己の先履行を拒否する権利というものがあります。
 しかし、判例は一般に、不渡や破産申立等買主側に客観的な信用不安があればともかく、売主が一般の情報や興信所の調査などを信用して一方的に買主を警戒して供給をストップし、相手に損害を与えたような場合、買主からの損害賠償の請求を認める傾向にあります。相手が供給ストップの為倒産したり、転売利益を失うことが損害となります。
 逆に、相当期間を置いた予告と、担保の提供ないし取引条件の改訂を求めても相手が拒否した場合、債務不履行責任を負わないと解されています。

Q 具体的にはどうしたら良いのでしょうか。
A 特に次の3点が大切だと思います。
① 裏書手形の交付の約束だったのに、自社振出の手形に代えて欲しい、と言ったり、財務内容の開示をしなかった相手に供給をストップした場合、債務不履行にならないとした判例もありますが、一般にはストップの予告をすることと、担保の提供を求めることが大事です。
② また基本契約書に「第×条 売主は、買主から注文を受けた場合においても、買主側の信用不安、特に従来の買掛金の未払等のある場合においては、出荷の制限または停止等適宜の措置をとることが出来、買主はこれに異議を述べない。」という条項を入れておけば、急な場合に対応できることになります。
 更に、「買主が従前の支払を遅滞し、又は延期を申出たような場合、売主は、相当な担保の提供を求めることができ、買主がこれに応じないときは、本基本契釣を解除することができる」という条項も有用です。
③ こうした法律的な対応と共に、普段取引先によく足を運び、取引先の状況をよく把握しておくことが大切なことになってきます。
 不良債権を作ってしまうと、普段一生懸命努力して積み上げた利益が、一気に 消滅してしまいますので、このことは非常に注意すべきことと考えます。