稲井法律事務所

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取締役をやめたときの注意 会社のための保証債務

取締役をやめたときの注意 会社のための保証債務

Q 私は取締役就任に際し会社の銀行との取引の連帯保証人になってくれといわれ、保証しました。このたび取締役を辞めることになりましたが、保証人としての責任も無くなりますか。
A 
取締役を辞めただけでは保証人としての責任はなくなりません。このような保証は補償限度額も保証期限も決めて無いのが普通で、包括根保証といわれるものだからです。責任を免れるためには、貴方が銀行に対し「取締役を辞めたので保証契約を解約する。」との通知を内容証明郵便でしなければなりません。そうすれば取締役辞任後に生じた会社の銀行に対する債務の保証責任は免れます。

Q 取締役辞任前に発生した会社の銀行に対する債務についても、保証責任を免れたいのですが。
A 
そのためには銀行の承認が必要です。

Q 銀行に承認してもらうにはどうすれば良いのでしょうか。
A 
あなたの後任取締役があなたに代わって右債務を引き受けてくれることが必要でしょう。あなたが債務を免れる代わりに、貴方の辞任前の保証債務額を後任取締役が引受けることを銀行が承認する契約を結ばなければなりません。これを免責的債務引受契約といいます。

Q 私が連帯保証人になるだけでなく、私の所有する不動産を担保に提供し、根抵当権を設定している場合はどうなりますか。これも内容証明郵便で前記のように通知するだけでよいのでしょうか。
A 
根抵当権を設定してある場合は通知だけではだめです。不動産登記簿の根抵当権設定登記を抹消してもらわなければなりません。

Q 銀行は簡単に応じてくれるでしょうか。
A 
恐らく銀行はあなたの後任取締役の所有不動産に根抵当権を設定するのと引換えに抹消するというでしょう。

Q これらの手続きをしておかないと、取締役辞任の後に何年もたってからでも保証債務の履行を求められたり、根抵当権を実行して競売にかけられるのでしょうか。
A 
そうです。個別の債務に対する連帯保証や抵当権の設定は、その個別の債務が時効で消滅すればそれに伴って消滅しますが、包括根保証や根抵当権は時効で消滅ということがありませんから、こわいのです。
 実例では、取締役の辞任は通知したが、保証の解約を言わなかった例で、保証契約後28年、取締役辞任後11年余を経過した後に辞任後の会社の債務も請求された元取締役が敗訴した例があります(東京地裁平成8年3月19日判決、金融法務事情1471号、[平成9年1月5日]92頁)。

Q 一番良い方法は。
A 
後任取締役と一緒に銀行に行って、あなたとの銀行との保証契約の合意解除と共に、後任取締役を加えての免責的債務引受と根抵当権の抹消の証んンをえられることをおすすめします。
 しかし、もし後任取締役または銀行の証人が得られない場合は、保証契約の解約通知の内容証明郵便を出す必要があります