Q 債権の消滅時効の中断事由は何がありますか?
A 裁判上の請求、差押え、仮差押え・仮処分、承認その他が中断事由になります。
Q 最近、時効の中断に関連して、最高裁判所の判決が出たと聞きました。
A 「差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知した後でなければ、時効の中断の効力を生じない。」と規定する民法155条の解釈が問題になりました(令和元年9月19日最高裁判決、裁判所時報1732号4頁)。
貸金債権を請求債権として、貯金の差押えを受けた債務者は、上記の「時効の利益を受ける者」に「当事者又はその承継人」も含むと解釈して、貸金債権の弁済期から10年が経過する前に差押命令が債務者に送達されていないことを理由に、時効消滅を主張し、原審(控訴審)はこの主張を認めました。
最高裁は、「民法155条は、差押え等による時効中断の効力が中断行為の当事者及びその承継人に対してのみ及ぶとした同法148条の原則を修正して差押え等による時効中断の効力を当該中断行為の当事者及びその承継人以外で時効の利益を受ける者に及ぼす場合において、その者が不測の不利益を被ることのないよう、その者に対する通知を要することとした規定である」として、上記の主張を退け、貸金債権の消滅時効は中断していると判断しました。
Q 消滅時効の中断事由は、今般の債権法の改正では、どのように変わりますか?
A 新法では、旧法の「中断」は「更新」に、旧法の「停止」は「完成猶予」に改められました。
そして、旧法の「裁判上の請求」「差押え」「仮差押え・仮処分」は完成猶予事由となり、「裁判上の請求」は、確定判決またはこれと同一の効力を有するものにより権利が確定した時に、「差押え」は強制執行等が終了した時に、それぞれ、消滅時効が更新されます。「仮差押え・仮処分」はその完成猶予事由が終了した時から6か月を経過するまでの間は時効は完成しないとされますので、消滅時効の更新のためには、その終了時から6か月以内に「裁判上の請求」をして確定判決等を得ること等を検討します。
また、旧法の「承認」は更新事由に、「催告」は完成猶予事由になります。「催告」があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は時効は完成しませんが、その猶予期間にされた再度の催告は、完成猶予の効力を有しません。
Q 確定判決またはこれと同一の効力を有するものにより権利が確定した場合、権利の時効期間はどうなりますか?
A 10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、10年となります。
Q 新法において新たに規定された、消滅時効の完成猶予事由はありますか。
A 権利について協議を行う旨の合意が書面によりなされた場合に、その合意により消滅時効の完成が猶予されるという制度が新設されました。
具体的には、「その合意があったときから1年を経過した時」「その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時」「当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6か月経過した時」のいずれか早い時までの間は、消滅時効は完成しません。