Q 賃貸借契約で、契約で定まった賃料があっても、賃料の増減請求ができると聞きました。
A 従前賃料(当事者が現実に合意した賃料のうち直近のもの)が不相当となった場合には、事情変更の原則の一適用として、賃料増減請求をすることができます。
「不相当となった場合」とは、「従前賃料の決定時以降に、土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減、土地もしくは建物の価格の上昇または低下、その他の経済事情の変動により、または近傍同種の賃料に比較して均衡を欠き、従前賃料を強制することが当該賃貸借の諸事情を考慮しても当事者に酷となるような場合」を言います。
Q 従前賃料の決定後、相当の期間が経過していなくても、賃料増減請求をすることができるのですか?
A この点、判例は、相当の期間の経過を要しないとしています。
Q 契約で、賃料を増額しない旨、あるいは、賃料を減額しない旨の特約がある場合には、賃料の増減額請求はできないのですか?
A 一定期間賃料を増額しない旨の特約は、有効ですが、「一定期間」については、何年くらいまで有効と認めるかは、賃貸借の経緯、その他の契約条件、経済情勢の変動、不相当性の程度等を総合的に判断して個別に判断されると考えられます。期限の定めのない不増額特約も同様です。
他方で、賃料を減額しない旨の不減額特約は、一般的に無効と解されています(借地について、不減額特約があっても、賃料減額請求権を行使できると判示した判例があります)。
Q 賃料増減請求権は、どのように行使するのですか?
A 通常は、内容証明郵便で、当該賃貸借契約について、相当な賃料額を主張して、賃料増額あるいは減額の請求権を行使する旨を記載します。
相手方との協議が調わなければ、まず民事調停を申立て(調停前置主義が取られています)、調停が成立しなければ、訴訟を提起し、裁判所が相当額について判断します。
Q 賃料増減請求権が行使されると、どのような効果が生じるのですか?
A 増減請求のされた特定の日から客観的に相当な額に増減されることになります。
具体的な相当額は、最終的には裁判所が判断することになりますが、増減の効果は、増減請求の日に発生します。
Q 増減の効果が発生した日から、裁判所が相当額を判断するまでの間は、賃料の支払はどうなるのですか?
A 賃料額について当事者に協議が調わないときは、増額請求の場合は賃借人が相当と認める額を、減額請求の場合は賃貸人が相当と認める額を支払い、訴訟による確定額との差額については、年一割の利息を支払えばよいこととされています。
Q 裁判所は、どのような方法により、相当賃料を判断するのですか?
A 基本的に、相当賃料の鑑定に基づき、判断します。
鑑定評価の手法は、「不動産鑑定評価基準」に従い、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法等の複数の方法を採用して、総合的に判断することが多いようです。