稲井法律事務所

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民法(債権法)改正

1 民法(債権法)改正の経過
 平成21年に法務大臣から法制審議会に、「民法のうち債権関係の規定について、同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分りやすいものとする等の観点から、国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直しを図る必要があると思われるので、その要綱を示されたい」との諮問がなされました。これを受けて、平成27年に「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」が答申されました。
 この要綱案の内容を踏まえた民法改正法案が、国会で平成29年5月に議決され、同年6月2日に公布されました。民法改正法の施行は公布の日から3年以内と定められているので、遅くとも平成32年の6月までには、この改正民法が施行されます。
2 改正の内容
 国会での改正法の提案理由は、「社会経済情勢の変化に鑑み、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備、法定利率を変動させる既定の新設、保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備、定型約款に関する規定の新設、等を行う必要がある」とされていました。
 改正法は、この提案理由に記載のある、①消滅時効、②法定利率、③保証、④定型約款、の4つの事項の他、多くの事項について改正をしています。ここでは、このうち、①②③についての主な要点のみを説明します。詳細につては弁護士等の専門家にお尋ね下さい。
3 「消滅時効」の改正内容
 現行法では「債権は、権利を行使することができる時から10年間行使しないときは消滅する。」とされていますが、改正法では、それに加え「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときは消滅する。」とされ、事実上、5年の事項となりました。又、5年の商事消滅時効も廃止されます。
4 「法定利率」の改正内容
 現行法では、利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は「年5分」と定められていますが、改正法では、①その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による、②法定利率は年3%とする、③法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに変動するものとする、等とされています。そして、年6%の商事法定利率は廃止されます。
5 「保証」の改正内容
 改正法では、事業のため負担する貸金等の保証契約又は根保証契約について、保証人が、その契約締結の日前1ヶ月以内に公正証書によって保証の意思を表示しなければ、保証契約は無効になる、ということになりました。但し、これには例外があり、借主が法人の場合の役員等や、借主が個人事業主の場合のその事業に従事している配偶者等であれば、公正証書による保証意思の表明は不要であり、保証人が法人の場合も同様に不要です。
 又、個人の根保証契約について極度額を定める必要があるのは、従前は貸金等債務の根保証のみであったのが、改正法では、個人の根保証一般に拡大されました。
 更に、保証人を保護するための各種の情報提供義務も新設されています。