稲井法律事務所

ご質問・ご相談

仮差押・仮処分

 よく、仮差押とか仮処分とか聞きますが、何をするのでしょう。

 裁判は長くかかります。その結果、せっかく判決を得ても、相手に財産が無くなっていたり執行ができない状態になっていたり、判決を得てから権利を実現するのでは遅きに失することを防ぐため行われます。
 次の場合がそれですが、正式の判決の前ですから一定の保証金を積みます。

①民事訴訟が本案である権利の実現を保全するための仮差押。

②民事訴訟が本案である権利の実現を保全するための係争物に関する仮処分。

③ 民事訴訟が本案である権利関係につき仮の地位を定める仮処分。

 それぞれにつきご説明下さい。

 まず、仮差押ですが金銭債権を保全する為行われ、債権の仮差押と不動産に対する仮差押等があります。
 債権の仮差押とは預金の仮差押、給料の仮差押等がり、預金の仮差押があると預金を下ろせなくなり、給料の場合も労働者に支払われず会社にその分が留め置かれます。
 実際に債権者がそれを得られるのは正式の判決があり、差押命令を得てからです。債権者が本判決による差押命令があるまでの間、他の仮差押や差押があると、仮差押が優先するのではなく各債権者の債権額に按分されて配当されることになります。
 不動産の仮差押はそれにより第三者に不動産が移転しても強制執行できることになり、又仮に仮差押の後に抵当権が設定されても仮差押に対抗できないので、強制競売等の手続においては、その抵当権者は仮差押が取消され、又は効力を失った場合のみ配当を受けることになります。

 仮処分とは何でしょう。

 処分禁止の仮処分、占有移転禁止の仮処分等の係争物に関する仮処分と、仮の地位を定める仮処分があります。
 処分禁止の仮処分とは例えば建物収去土地明渡を求める場合、建物が第三者に移転してしまうと執行できないのでこれを予防するもの、又建物明渡請求の場合その占有が移転してしまうと執行できないので占有移転の禁止の仮処分を行い、これを行うと執行のとき建物が第三者に移転したり占有が移転しても執行債権者に対抗できないことになります。

 仮の地位の仮処分とは

 例えば労働者の地位の確認を求めるような場合、裁判で勝ってから復職するのでは生活が成り立たず、その間仮処分で仮に労働者の地位を認めてもらう制度です。妨害禁止の仮処分も仮の地位を定める仮処分といえるでしょう。このような仮処分の場合、裁判所は双方当事者を呼んで審尋を行うのが普通です。仮差押の場合、相手を呼んだりしません。
 いずれの仮差押・仮処分も迅速に申立てる必要があるので、素早く疎明資料を揃える必要があります。