稲井法律事務所

ご質問・ご相談

賃貸借の更新料

Q アパートの大家さんから、賃貸借契約の更新の際に、更新料を支払ってもらいたいと言われていますが、更新料は支払わなければならないものなのですか。
A 借地借家法では、賃貸借契約の期間が満了しても、賃借人が使用を継続する場合には、賃貸人からの正当な解約手続がなされない限り、賃貸借契約は更新されることになっていますので、特約がなければ、更新料を支払う必要はありません。
Q 特約があれば支払わなければならないのですか。
A 契約の際に「契約更新時には更新料として○○円(又は賃料の○ヵ月分)を支払う」等のように金額が明確になった特約をしていれば、原則として、その更新料を支払わなければなりません。
 借地借家法には「契約更新に関する借地借家法の規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効とする」旨の規定がありますが、裁判所では、更新料支払いの約束は、更新料の授受によって円満な賃貸借契約の存続が図られるものであり、更新料の額が事前に契約を締結する時点で明確になっていれば賃借人に特別に不利益をもたらすものではないので、更新料の額が暴利性を帯びない限り有効である、という取扱になっているのです。
Q 更新料支払いの特約があるにもかかわらず、更新料を支払わなくてもよい場合もあるのですか。
A 約束された更新料が世間相場に比して著しく過大であって、賃借人に一方的に不利益なものであれば、更新料支払いの特約が民法や消費者契約法などに違反して無効とされ、更新料を支払わなくてもよい場合があります。
Q 更新料支払の特約があるにもかかわらず、更新料を支払わなければどうなりますか。
A 大家さんから更新料の支払いを請求されることになります。そして、それでも支払わなければ、契約を解除されて、明け渡しを要求されるかもしれません。
Q 賃料を滞りなく支払っていたとしても、更新料を支払わないことだけで契約を解除されるのですか。
A 下級審の裁判例の中には、更新料を支払わなくても賃貸借契約自体は法定更新される等の理由から更新料不払による契約解除は無効であるというものもあります。
 しかしながら、最高裁判所は、借地契約に関してですが、「更新料の支払いが、賃料の支払いと同様、更新後の賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしている場合には、その不払いは、右基盤を失わせる著しい背信行為として賃貸借契約それ自体の解除原因となりうる」と、更新料の不払いにより契約が解除される場合があることを述べています。又、家賃3ヵ月分の更新料の不払いにより契約解除が認められた下級審の裁判例もあります。
 この問題は、事案により結論が異なる可能性のある難しいものですので、実際に問題が生じた時には弁護士に相談して下さい。
Q 土地の賃貸借でも更新料が問題となりますが、建物賃貸借の場 合と何か異なることがありますか。
A 基本的には、建物賃貸借の場合と同様と考えてよいと思います。