稲井法律事務所

ご質問・ご相談

保証の責任

Q 知人がマンションの一室を2年間賃借するのに連帯保証人になったのですが、賃貸借契約が更新された場合、更新後の契約に基づく知人の債務についても、責任を負うのですか?
A 最高裁は、「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証人の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当である。」と判断していますので、原則として責任を負うことになります。

Q 更新について、賃貸人から全く連絡をもらっていなくとも、責任を負うのですか?
A 上の判例の考え方からすると、「賃貸人から更新の連絡がない。」という事情だけで、責任を免れることにはなりません。
ただ、同判例は、「賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡するようなこともなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合に保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されることがあり得る」としていますので、このような事情がないかを慎重に調べる必要があります。

Q それでは、取締役在任中に、会社の債権者との間で継続的な包括根保証契約を締結した場合、取締役退任後に発生する債務についても責任を負うのですか?
A 平成16年改正民法(施行日平成17年4月1日)では、根保証契約の内、主債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(貸金等債務)が含まれるもの(貸金等根保証契約)では、極度額の定めを書面等で定めなければならない、とされましたので、責任の範囲は、その極度額までになります。改正前に締結された根保証契約は、改正法の経過規定により、施行日から3年後の平成20年3月31日が元本確定期日となりますので、責任の範囲は、その確定した元本に基づくものになります。

Q 極度額の範囲なら、退任後に発生した債務も負わなければならないのでしょうか?
A 退任した場合は、債権者に取締役退任を通知すると共に、保証契約を解約する旨の意思表示をする内容証明郵便を送付しておくのが良いでしょう。最高裁判例には「期間の定めのない継続的保証契約は、保証人の主債務者に対する信頼が害されるに至った等保証人として解約申入をするにつき相当の理由がある場合には、右解約により債権者が信義則上看過できない損害を被るような特段の事情がある場合を除いて、保証人から一方的に解約できるものと解するのが相当である。」と判断したものがあります。
 また、解約が認められなくとも、主債務者と保証人の関係、保証契約締結の経緯、当該取引の業界における一般的慣行、債権者と主債務者との取引の具体的態様及び経過、債権者が取引にあたって債権確保のために用いた注意の程度、保証人の認識の程度、保証契約締結後の保証人の地位や主債務者との関係の変化等の諸事情を斟酌して、信義則や権利濫用法理に基づき、保証人の責任が合理的範囲に限定される場合があります。