Q 平成22年10月から金融ADR制が施行されたと聞いておりますが、どのような実情でしょうか。
A まず、ADR機関の体制からお報せします。銀行協会や信託協会は、独自に協会内のADRで発足し、信用金庫、信用組合、農協、その他の投資コンサルタント等は弁護士会の紛争解決センターや仲裁センターと提携することにより発足しました。金融機関に出頭義務、資料提出義務を負わせたり、特定調停案と言って、当事者が裁判で争わない限り、その調停案を受け入れなければならないという特色については共通です。又、調停の申立費用と期日手数料につき、金融機関側が負担することも共通です。
Q 調停を申立てるとすぐ、調停が始まるのですか。
A まず、各協会は個別金融機関がその問題につき対応するよう図りますが、対応できない場合、調停の開催となります。
Q どのような問題が多いのでしょうか。
A 大きく分けて4つあるように思います。①金融機関のミスによる損害の補償、②企業業績や景気動向に伴い、借入期間の延長など借入条件の変更を求めるもの、③担保物件の価格下落に伴い、下落価格で第三者が買取るので、債務を免除して欲しいというもの、④デリバティブ商品をめぐる紛争。この最後のデリバティブ商品をめぐる紛争だけで、平成22年に銀行協会だけで約60件位の申立があったようです。
背景に景気低迷で企業の借入が減り、銀行としてはデリバティブ商品を売って収益を上げないと成り行かなくなって無理な販売をしたということがあります。
Q 新聞紙上でデリバティブという言葉をよく聞くのですが。どのようなものを言うのですか。
A デリバティブとは、金融派生商品のことで大きくは、①スワップ(金利スワップのように一定期間、キャッシュフローを交換すること)、②先物(将来のある時点で何かを売買するという買い手と売り手の契約)、③オプション(買い手にある決められた価格で将来のある一定時点に何かを購入したり売却したりする権利)の3つに分けられます。
高度の計算式を使って行いますのでその分野の専門家でないと理解できないのが通常です。又、本来リスクヘッジが目的だったものが、レバレッジを使い、数十倍、数百倍となり、ヘッジより利益目的のものが多く、損失が出た場合も多大になります。
Q そのような商品を買ったお金持ちのお年寄りや中小企業は、どのように保護されるのでしょう。
A 金融商品取引法や銀行法で、①適合性の原則(その顧客にふさわしい商品か)、②説明をきちんとしているか、③不招請勧誘や再勧誘がないか、④手数料を開示しているか、⑤お金を貸し付けるという優越的地位を利用していないか、等がチェックされます。これらの原則を大きく違反した場合、契約そのものが真の合意に基づくものでないという意味で、契約を無効とした判例がいくつかあります。