Q 自転車に乗っていた小学生が歩行中の老人に衝突して怪我をさせてしまいました。老人が蒙った損害を賠償する責任は誰にありますか。
A 結論から言いますと、小学生は責任を負わず、小学生の両親が責任を負います。
民法は「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、事故の責任を弁識するに足りる能力を備えていなかったときは、その行為について責任を負わない。」「責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負うものは、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったときは、又はその義務を怠らなくても損害が生ずるべきであったときは、この限りではない。」と定めています。そして、裁判上では、おおよそ、中学生以上であれば、「事故の責任を弁識するに足りる知能」を備えており、小学生以下は備えていない、と考えられているからです。
Q それでは、事故を起こしたのが中学生だったら、どうなりますか。
A その中学生が責任を負い、両親は責任を負わないことになります。但し、最高裁判所の判例により、その中学生を監督すべき立場にあった両親等に中学生の監督について固有の過失が認められるときには、両親にも中学生と共に責任が負わされることになっています。
なお、両親が法律上の責任を負わない場合も、中学生に代わって両親が賠償金を支払うことはなんら差し支えありません。
Q 学校でけんかをして相手の子供に怪我をさせたときは、どうなりますか。
A 考え方は、これまで説明したことと同様です。そして、更に、学校の先生に監督責任が認められるときは、その先生と学校も共に責任を負うことになります。
Q 責任を負う場合には、被害者の蒙った損害を100パーセント補償しなければなりませんか。
A 被害者にも落ち度(過失)があるときは、「過失相殺」と言って、過失の度合いに応じて賠償額が減額されます。
そして、この被害者の過失は、単に被害者本人だけでなく、被害者を監督する両親等の被害者側の過失も含むものとされています。
Q 両親としては、日頃どのようなことに気をつけておくべきですか。
A 子供さんに対して、日頃から、事故を起こさないように注意しておくことが大切です。そして、万一に備えて、損害保険会社で扱っている「賠償責任保険」を掛けておくと安心です。この保険を掛けておくと、賠償責任を負ったときには保険会社が代わって賠償金を支払ってくれます。保険料はそれほど多額ではありません。
なお、賠償責任とは異なりますが、高校生(高等専門学校を含む)以下の学生や児童が学校での事故や事件で負傷したり、病気になったときには、公的機関が運営している「災害共済給付制度」により、定められた範囲の給付金を受け取ることができます。