稲井法律事務所

ご質問・ご相談

給料は差し押さえられますか?

Q 借金をして返さないと給料を差し押さえられることがあると聞きましたが、給料の差し押さえとはどういうことですか。

A 裁判所が本人の勤務先に対して「債権差押命令」という書面を発して、勤務先に対して、給料や賞与、退職金等の一定額を本人に支払うことを禁じ、そして、それを債権者に取り立てることを許す制度です。

Q えっ、差し押さえられるのは、給料のみではないのですか。

A そうです。給料のほか、ボーナス(賞与)や退職金も差押の対象になります。

Q それらは、全額が差し押さえられてしまうのですか。

A 原則として、それぞれについて、4分の1の額のみが差し押さえられることになっています。但し、給料と賞与については、その額が28万円(月給の場合)を超えるときはそれぞれ21万円を超える額が差し押さえられます。例えば、月給が20万円の場合には4分の1の5万円が差し押さえられ、月給が40万円の場合には、21万円を超える19万円か差し押さえられます。

Q 基本給のほかの諸手当も差し押さえの対象になるのですか。

A なります。但し、通勤手当、出張旅費等の実費部分は差し押さえの対象になりません。

Q 4分の1というのは、何が基準になるのですか。支給総額ですか、手取額ですか。

A 支給総額から所得税、住民税、社会保険料を差し引いた金額を基準にします。

Q 差し押さえはいつまで続くのですか。

A 債権者の請求している債権額に充るまでです。

Q 転勤や、配置換えになった場合にも給料の差し押さえの効力は続くのですか。

A はい、続きます。

Q 本人が勤務先を退職した場合にはどうなりますか。

A 給料が支給されなくなりますので差し押さえの効力はなくなります。しかし、形だけ退職して再就職したことにした場合には、差し押さえの効力は続くことにされます。最高裁は、再雇用されるまでに6ヶ月を経過した事案では、差押の効力が及ばないとしています(昭和55年1月18日判決)。

Q 役員報酬は差し押さえの対象になりますか。

A はい。役員報酬は全額が差し押さえの対象となります。但し、サラリーマン重役の場合には、給料部分と役員報酬部分が区別されて、給料部分については先ほど述べた差し押さえの範囲が一部に限定された差押命令が発せられることもあります。

Q 差し押さえられた給料はどのように処理されるのですか。

A 勤務先に差押命令が送達されて1週間を経過すると、債権者の取り立てが可能となり、債権者から勤務先に対して直接取り立てが行われることになります。

Q その場合には、勤務先は必ず債権者に支払わなければならないのですか。

A はい。弁済するか供託するかのどちらかです。但し、義務的に供託をしなければならない時もありますので、差押命令と一緒に送られてくる書類をよく読んで、その指示に従うことが必要です。
 なお、勤務先から本人に対して債権があるとき、労基法の24条協定があり、弁済契約に基づいて給料との相殺が許される場合には、その分を差し引けます。