稲井法律事務所

ご質問・ご相談

根保証は慎重に

Q 根保証とはどのようなものですか。
A 普通の保証は、借主が借りたお金を返せないときに保証人がそれを代わりに支払えばそれで保証契約が終了するのですが、根保証というのは、貸主と借主が貸し借りを何回も継続することを前提にして、契約日以後の一定の時期までのすべての取引について保証しようというものです。その取引はお金の賃借だけでなく商品の売掛取引のようなものでも構いません。
 借主が支払不能に陥ったり、約束の根保証の期限が到来するなどの一定の事情があると、その時点の残存債務について保証人が支払の責任を負うことになります。
 根保証には、保証期間及び保証限度額について定めがない「包括根保証」と、「限定根保証」があります。
Q 保証期間というのはなんですか。
A 何時から何時までの期間の取引について保証するかを取り決めた場合の期間を言います。保証期間を定めない場合もありますが、その場合は、根保証契約が解約されるまで保証し続けることになります。
Q 根保証の契約をする以前に発生している債務を保証することもありますか。
A 契約でそのように定めれば、保証することになります。多くの契約書では、そのようになっています。
 契約で特に定めがなければ、既存債務については保証せず、将来発生するもののみを保証することになります。
Q 保証限度額というのはなんですか。
A 根保証では、保証人が保証する限度の金額を取り決めることができます。その取り決めた金額のことを保証限度額といいます。これを「限度額」ともいいます。
 この限度額は、原則として、元本、利息、損害金も含んだ合計額をいいますが、契約で「元本限度額」とされているときは、その限度額は元本のことを言い、その元本に対する利息、損害金を元本極度額に加算して保証することになります。
 なお、根保証では極度額を定めない場合もありますので、その場合には、保証期間中に発生した債務の金額について保証することになります。
Q 根保証の契約をすると、常に契約書どおりの責任を負わねばなりませんか。
A 原則として契約書どおりの責任を負わねばなりません。ですから、根保証の契約をするときには、特に慎重に契約文言をよく読んでサインをすることが必要です。
 但し、根保証における保証人の責任が重いこともあって、裁判所によって保証人の責任が軽減されることもあります。特に、極度額の定めのない包括根保証について、裁判所が「根保証契約が締結されるに至った事情、貸主と借主との取引の態様・経過・貸主が取引に当たって債権保全のために講じた注意の程度とその手段、その他一切の事情を斟酌して、信義則に照らして、保証人の責任を合理的範囲内に制限すべきである。」として、座債務の一部のみを支払えばよいとした事例などがあります。
 又、極度額の定めがある場合でも、保証限度額が保証契約締結時点における主債務額に比較して高額である場合には、裁判所は、包括根保証の場合と同じように保証人の責任を軽減することがあります。
 更には、貸付担当者による説明が、普通の保証であると誤解させるようなものであり、保証人が誤解して、根保証契約書にサインしてしまった場合などには、裁判所によって保証契約全体が無効とされたり、その貸付時の金額を越える部分が無効とされたりすることもあります。