A 短期配偶者居住権(遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6ヵ月を経過する日のいずれか遅い日まで)と長期居住権(所有権を取得しない場合でも配偶者以外の者と共有である場合を除き終身居住する権利)とがありますが、ここでは長期居住権について説明します。 まず、税務上の計算方法を示します。
建 物
① 配偶者居住権
建物の相続税評価額 - 建物の相続税評価額 × (残存耐用年数 -存続年数)/残存耐用年数 ×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
従って、1000万円の建物、70歳の女性で残存耐用年数3年、存続年数20年(木造の場合、法定耐用年数22年)の場合
1000万円-1000万円 × (残3年-20年)/ 残3年 ×0.554 =1000万円(マイナスはゼロと評価)
となります。つまり、建物の所有権と同じ評価を受けることになります。
複利現価率 |
|
5年 |
0.863 |
10年 |
0.744 |
15年 |
0.642 |
20年 |
0.554 |
土 地
② 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用の権利
土地等の相続税評価額 - 土地等の相続税評価額 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
①の場合で敷地の路線価が4000万円とすると
4000万円 - 4000万円 × 0.554 =1784万円
70歳の女性は平均余命が20年ですから、このような計算になります。
これは、相続税の評価額ですから遺産分割の時は時価は路線価の8分の10と一般に評価され、1784万円 × 10/8 = 2230万円と評価されることになるでしょう。
平均余命表 |
||
年齢 |
男 |
女 |
25 |
57 |
63 |
50 |
33 |
38 |
70 |
33 |
20 |
80 |
9 |
12 |
Q そうすると、配偶者居住権が遺産分割で取得できると言ってもある程度評価されて他の現金・預金に対する権利分が少なくなりますね。
A そのとおりです。居住権だけでは生活できないので、遺言や生前贈与で配偶者に居住権を与えておけば、それを計算外として預金や現金に対し権利を主張できるので、取得する預金が少なくて困るということがありません。
従いまして、配偶者居住権を遺言書に盛り込みたいときは、法律施行日が2020年4月1日なので、施行日経過後に盛り込むことをお勧めします。
なお、遺言をしても遺留分の計算上は評価されます。