Q 当社A(債権者)は取引先B(債務者)に対し債権がありますが、債務者Bの当社Aに対する将来の支払が不安なので、債務者Bの売掛先C(これを第三債務者といいます)に対する債権を担保にとりたいのですが、どうしたらよいですか。
A B社から、B社のC社に対する債権をA社に譲渡したという文面の内容証明郵便をC社宛に出して貰う方法、つまり債権譲渡による方法が最も有効です。
Q わかりました。しかし、B社とC社との間に「B社はC社に対する債権を、C社の承諾なく第三者に譲渡してはならない」との特約がある場合はどうですか。
A その場合は、A社はB社から代金取立の代理権を授与してもらい、B社の代理人としてC社におもむき、C社から代金を受け取ってこれをB社に対する債権の弁済に充当する「代理受領」の方法が採られます。
Q 代理受領には問題点はないのですか。
A 債権譲渡の場合、C社はA社に対してしか支払が出来ず、間違ってB社に払っても、A社もC社に支払を求められます。又、内容証明で通知することにより、それに後れた債権の二重譲渡にも対抗できますし、その後B社の債権者から差押えられる心配はありません。
しかし、代理受領の場合だと、C社がB社に支払っても、一般には文句が言えず、B社の債権者が差押えてきた場合、A社はその債権に質権を設定しておかない限り対抗できません。さらに民法第651条により、B社は何時でも代理権を解除できます。
Q それではどうすればよいのでしょう。
A A社とB社で代理受領の委任契約を結ぶとき、①委任者Bは受任者Aの同意なしに委任を解除しないこと、②弁済の受領は受任者Aだけが行い、委任者Bは受領しないこと等、の特約を結ぶことが必要です。
Q それでC社に対抗できますか。
A それだけでは対抗できません。三者契約で代金は必ずA社に支払い、B社には支払わない、とC社にも調印させるのが最も確実ですが、実際問題として中々困難です。そこでA社とB社の特約(委任を解除しない。受領は受任者のみが行う)の入った委任状をC社の処へ予め持参し、「右承諾します」と記名、捺印して貰うのです。そうしておけば、もしC社がB社に支払っても担保権を侵害したことになり、A社はC社に損害賠償の請求ができます。
Q なるほど、そこまでしておけば、後でB社が他者D社に債権譲渡し内容証明で通知した場合でも対抗できるのでしょうか。
A 元々代理受領は工事請負代金のように債権譲渡禁止特約のあることが取引業界において普遍的慣例の場合に用いられ、その場合は後に債権譲渡を受けたD社は悪意者として保護されません(民法第466条2項)。
しかし、そうした慣行のない業界で後に譲受けたD社が善意の場合、やはりD社への債権譲渡の方が優先し、A社はB社に損害賠償請求できるに過ぎませんが、B社に資力がなければ効を奏しないことになります。
従って代理受領の方法を採る場合は、こうした法律的弱点を充分に把握し、前記の特約に個人保証をつける等、細心の注意を払う必要があります。