稲井法律事務所

ご質問・ご相談

老朽マンションの対策

Q 最近老朽マンションの建替え等について話題になっていま
 すが、制度の概要を教えて下さい。

 A マンションの総戸数は全国で約590万戸であり、昭和56年
 以前のマンションはいわゆる旧耐震基準によるもので、その内約2
 割弱に当たる約106万戸が「耐震不足マンション」と国土交通省
 では推計しており、首都直下型地震や南海トラフ地震に備えて、
 その多くは耐震改修や建替えの必要があります。

  そのために耐震改修法やマンション建替え円滑化法の改正がなさ
 れました。


 Q 昭和56年以前に建ったマンションは全て改修しなくては
 いけないでしょうか。


 A そうではなく、耐震診断の講習を受けた建築士が、国の定めた
 耐震診断基準に基づき実物のマンションを現地で診断し、一般に
 「
IS値」というものさしを用いて、その数値が0.6を下回ると
 耐震不足と判定され、改修か建替えが必要とされます。


 Q 耐震改修工事はどのような手続で行われますか。

 A 改修工事は、壁や柱などの共用部分を変更する工事ですので
 区分所有法第17条1項で所有者及び議決権の各々4分の3以上の
 賛成が必要となります。


 Q 建替えの手続はどうですか。

 A マンションの建替え円滑化法が出来、所管行政庁から耐震改修
 の必要性を受けた場合、容積率の緩和や融資の特例などの大きな
 メリットがあります。


 Q 建替え以外に敷地権の売却という方法があるとききました
 が?


 A 耐震性不足の認定を受けてマンションの建物・敷地を一括して
 敷地売却組合から特定の者に売却する方法で、区分所有者が個々に
 売るより容積率の緩和を受けられるので、買う方にもメリットが
 あります。

 手順は、
 ① マンションが耐震性不足で除去することの必要性を特定行政庁
 に認定してもらいます。

 ② 買受人や売却価格等を説明して区分所有者の総会で、区分所有
 者、議決権及び敷地利用権の持ち分価格の5分の4以上の決議を
 することになります。

 ③ 他方、借家人や担保権者の同意は不要であり、借家人には公共
 用地買収時と同等の補償金を支払うことで借家人は退去が義務づけ
 られています。また担保権者は売却して各区分所有者に分配される
 金銭が供託され、その供託金に物上代位することで権利保護を図っ
 ています。

  借家人が提示された補償金に不満な場合には民事裁判に訴える
 ことになります。この点で借地借家法の正当事由が不要となる特別
 規定と位置づけられます。借家権や担保権は一定期日(権利消滅期
 日)に一斉に消滅し、買受人はまっさらな権利として購入すること
 ができます。

 ④ 売却代金から一体いくら分配されるのかが各区分所有者の最大
 の関心事ですので分配金の配分は分配金取得計画として特定行政庁
 の認可を受けることになります。