稲井法律事務所

ご質問・ご相談

建築紛争ADR一覧

Q 建築をめぐる紛争(業者と施主との紛争及び建築をめぐる近隣との紛争)を解決したい場合、どうすれば良いのでしょう。
A まず、建築に詳しい弁護士に相談し、以下に述べる裁判、調停又はADR(裁判外紛争処理機関)で解決します。
まず、裁判(東京地裁の場合民事22部)及び調停のことを説明します。
裁判の場合も調停の場合も建築士等の専門委員の援助で行われますが、裁判官、原・被告代理人とも専門的知識が乏しい場合が多く、裁判に至る前に争点整理、瑕疵発生原因及び当事者責任の特定にADRを活用しないと、いきなり裁判では、これらの特定が出来ないといわれています。
ちなみに平成13年4月から平成14年7月まで裁判が申立てられた347件のうち調停成立が240件、裁判官による和解が48件、訴取下が17件、判決が42件となっています。
Q 裁判外での紛争処理機関について教えて下さい。
A まず、国土交通省に設けられている中央建設工事紛争審査会があります。あっせん・調停・仲裁により弁護士などの法律委員、建築、土木などの技術委員、行政経験者などの一般委員で解決します。管轄は、①当事者の一方又は双方が国土交通大臣の許可を受けた建設業者である場合、②当事者の双方が建設業者で、許可をした都道府県知事が異なる場合で、調停の手数料は100万円までが2万円、500万円まで(1万円単位)×40円+16,000円、1億円まで(1万円単位)×25円+23,500円、1億円を超えるとき(1万円単位)×15円+123,500円です。
一方各都道府県建設工事紛争審査は、①当事者の一方のみが建設業者で、当該都道府県知事の許可を受けた建設業者である場合、②当事者の双方が当該都道府県知事の許可を受けた建設業者である場合、③当事者の双方が許可を受けた建設業者でなく、その紛争に係る建設工事の現場が当該都道府県の区域内にある場合です。
東京都の場合、調停手数料は国土交通省の料金と同じですが、算定できないときは36,000円とされています。
Q 各区役所の建築紛争調整とはどんなものですか。
A これは建築主と業者との紛争というより、中高層建築物の建築に伴って生ずる建築紛争で、建築主と近隣関係住民のトラブルを扱います。手順は、①建築主の条例に基づく建築計画等の証明、②近隣関係住民からの質問や要望について当事者間での話し合い、③当事者と区担当者との話し合い、④当事者双方の申出により、区のあっせんを行い、⑤あっせん経過を踏まえ、調停を行うか判断します。
Q 弁護士会の住宅紛争審査会とはどんなものなのでしょうか。
A これは、住宅の品質確保の促進に関する法律の適用される評価住宅及び住宅瑕疵担保履行法による保険住宅のみ対象で、近隣とのトラブルは扱いません。住宅紛争審査会への申請手数料は、一律1万円で、申請件数は全国で、平成25年126件、平成26年が164件、審理回数は平均4.7回、平均6.6ヵ月とされています。住まいるダイヤル(0570-016-100)による事前相談も行っています。
Q 弁護士会には住宅紛争審査会以外にあっせん・仲裁センターがあると聞きましたが。
A おっしゃるとおりで、業者と施主間のトラブル以外に建築主と近隣住宅とのトラブルも全て扱い、管轄の定めもないという制度で、東京弁護士会のあっせん・仲裁センターの場合、申立手数料10,800円、期日ごとの手数料5,400円、成立手数料(例えば100万円の場合8万円、1000万円の場合39万円)となっています。
ベテランの弁護士があっせん・仲裁人となり、有能な建築士が助言仲裁人となります。各区役所で解決できなかった事例を解決した経験もあります。弁護士会のあっせん・仲裁では当事者双方の希望であっせん人も選べます。
このように紛争解決といっても、その内容によって取扱い機関が異なりますので、今までの記述を参考にして下さい。申立の書式等は各ADR機関の窓口へお問い合わせ下さい。