稲井法律事務所

ご質問・ご相談

ハーグ条約実施法

Q 日本もハーグ条約を承認するようになったとのことです
  が、どのようなことですか。

 

 A ハーグ条約は、1980年ハーグの国際司法会議で作られ、親権・養育権(監護権)を持つ親のもとから、他方の親が子供を同意なく国境を越えて連れ去る、または留めておくことになった場合、親が子の返還を申し立てると、その子どもをすぐに元住んでいた国に返還することを基本原則としています。
 それともう一つは、両親の養育権(監護権)や面会交流の権利が実現したり守られたりすることを目的としています。

 子供にとっては親同士が離ればなれになっても両方の親と行き来できるのが良いし、それは国際離婚でも変わらないという考えのものに作られた条約で、主要国で加盟していないのは日本とロシアだけだったのが諸外国に押され、日本は平成255月、承認することになりました(平成2610月現在93ヶ国が加盟)。

Q 国内の法制度はどう変わりましたか。

A 実施法は平成256月に制定され、平成264月以降実施されました。
 外国の人が申し立てると、その子の居場所を外務省が調べ、通知し、裁判やADRと呼ばれる裁判外紛争解決機関(東京三弁護士会)の手続きが始まります。強制的返還を求める場合は、家庭裁判所から決定が出て間接強制(実行しないとペナルティを課す)をするのですが、一般には調停手続やADRから始まります。
 裁判所は以下のいずれにも該当するときは、子の返還を命じなければならないことになります。
①子が16歳に達していないこと。
②子が日本国内に所在していること。
③常居所地国の法令によれば、当該連れ去り又は留置が申立人
 の有する子についての監護の権利を侵害するものであること
(多くの国で誘拐罪となっている)。

④当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時に、常居所地が
 条約承認国であること(日本では平成
2641日より)。

 

   但し、子に対するDVがある場合や、連れ去りや留置の開始か
  ら一年が経過し子の生活が安定している場合等は別です。


Q 調停やADRでは、どんな点が気をつけられるのでしょう。

A つぎのような点です。
①実際の返還のための実務的アレンジ(配慮)。
②潜在的な逮捕への対応を含む子の到着後のアレンジ。
③請求国にて家庭裁判所が審理するまでの子の生活及びその
 世話についての短期的および中期的アレンジ等です。


Q 面会交流も外国人との関係では日本と異なるのでしょうか。

A 以前、「クレーマー、クレーマー」という映画がありました。米国でも以前は離婚すると片方だけが親権者でした。
 この映画では離婚した父と子が仲良く生活していたのですが、判決で母親が親権者になりました。子が父の処へ行きたいと主張するので母と共同して子を養育するように変わっていったという内容で、この映画の後、米国では離婚しても共同親権で面会交流を月二回するのが原則になりました。
 日本の女性は片方だけが親権者の日本の制度に慣れて、余り面会交流をさせたがりません。それが養育費の不払いの原因になっているといわれています。
 ハーグ条約に基づく面会交流の調停やADRでは、どのように面会するか、その間親はどうしているか、面会交流中相手の悪口を言わない等ルールを決めて守ること等細かいところまで話し合いで決めます。

Q 面会交流も外国人との関係では日本と異なるのでしょうか。日本語が話せない外国人の場合、どうやって手続しますか。

A 裁判所の手続は日本語で行いますので、裁判所が必要と判断した場合、通訳人を選任しますが通訳費用は予納することになります。