稲井法律事務所

ご質問・ご相談

婚姻費用の分担

Q 婚姻費用とは何ですか?

A 婚姻家庭が、その資産・収入・社会的地位等に応じた通常の社会生活を維持するために必要な費用であり、夫婦が互に分担するものです。

Q どのような場合に婚姻費用の分担が問題になりますか?

A 夫婦が同居していて、家計が一緒の場合には問題になることはあまりありません。

  夫婦が別居している場合に、一方が他方に婚姻費用の分担として、生活費の支払いを求めるという場合がほとんどで、その多くは離婚の前に問題になっています。

Q 一方から他方への婚姻費用の分担額はどのように算定されるのですか?

A 婚姻費用の分担額の算定は家事審判事項であり、「一切の事情を考慮して」(民法760条)、家事審判官(裁判官)が決めることになります。

  具体的には、東京家庭裁判所を含む多くの家庭裁判所の実務では、東京・大阪養育費研究会作成による「簡易迅速な養育費等の算定を目指して――用意期比・婚姻費用の算定方式と算定表の提案――」における算定方式を用いて「基礎収入」が多い義務者配偶者が「基礎収入」が少ない権利者配偶者に支払う婚姻費用の額を定めています。

  計算式は、夫婦が別居し、権利者が子一人(15歳未満)と同居し、義務者が単独で生活していて、義務者の基礎収入(X)が権利者の基礎収入(Y)よりも大きいという場合、枠内の通りになります。

  この算定方式に基づいて、子どもの数・年齢ごとに双方の総収入(年収)から婚姻費用の額を導き出せる算定表が作成されています。
 

①権利者世帯に割り振られる婚姻費用
      Z=(X+Y)×    100+55
  100+100+55
  子が15歳以上の場合には、5590になります。
②義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の分担額=Z-Y
 

Q 算定表にいう総収入の認定はどうなりますか?

A 総収入は、給与所得者は源泉徴収票の「支払金額」によって、自営業者は確定申告書の「課税される所得金額」によって、認定されます。

  「基礎収入」は、給与所得者の場合、総収入から公租公課(所得税、住民税、社会保険料)、職業費(収入を得るのに必要な経費)、特別経費を控除した残額で、概ね、総収入の3442%の範囲内(高額所得者の方が割合が小さい)になります。

  自営業者の場合、総収入から所得税、住民税、特別経費を控除した残額で、概ね、総収入の47%~52%の範囲内(高額所得者の方が割合が小さい)になります。

Q 有責配偶者が婚姻費用の分担を求める場合にも支払われる婚姻費用の分担額は変わらないのですか?

A 有責の度合いや態様によって、義務者の支払うべき分担額が減免される場合があると言えます。