Q 夫の負債については、妻も支払う義務がありますか。
A 現在の法律では夫婦の財産関係は別々に扱われることになっていますので、原則として、夫の負債については、妻は支払う義務がありません。但し、夫婦の日常の家事に関して夫が負債を負った場合には、妻も夫と連帯してその負債を支払わなければなりません。又、妻が夫の負債について連帯債務者や保証人になっているときは、妻は夫の負債を支払う義務があります。
Q 日常の家事に関して夫婦が連帯して責任を負うのはどのような場合ですか。
A 法律には「日常の家事に関して法律行為をしたとき」と定められているだけで、具体的には裁判所が決めることになります。これまでに、食料品や衣料品の購入代金、家庭用光熱費、家賃、テレビ等の機器の購入代金、家族の医療費、子供の教育費等が、それに当たるとした裁判例があります。借入金については、日常の家事にあたらないというのが多くの裁判例ですが、中には、その使途を検討のうえ借入金も日常家事に該当するとした裁判例もあります。
Q 夫が勝手に保証人欄に妻の名前を書いてしまったときはどうなりますか。
A 妻がそのことを承諾していなければ、妻は保証人になることはありません。但し、妻が保証人になることを承諾していたり、あるいは、そのように債権者に思わせるような態度をしていたりすれば、保証人とされる場合があります。
Q 夫が死亡したときには夫の借金はどうなりますか。
A 妻は、積極財産を何も相続しなくても法定相続分に応じて夫の債務を相続することになります。但し、相続の開始されたことを知ったときから3ヶ月以内に相続放棄をすれば、夫の債務を負担する必要はなくなります。しかし、相続放棄をすると、夫の一切の財産を相続できなくなりますので、放棄するか否かはよく考える必要があります。なお、妻が夫の借金の保証をしていれば、相続放棄をしても保証債務は免れません。
Q 夫と離婚した場合には、妻の責任は軽くなりますか。
A 離婚すれば、日常家事債務を負担することはなく、夫の負債を相続することもありませんので、その限りで責任が軽くなるとは言えます。しかし、それ以外では、離婚してもしなくても変わりはありません。なお、夫の借金を保証していれば、離婚しても保証債務は免れません。
Q 債権者から法律上の根拠もなく「夫の借金を妻が払うのは当たり前だ」と強硬に言われた時にはどうしたらよいですか。
A 夫に代わって払ってあげようと決めたときは別として、支払いを拒否すると決めたときには、断固拒否すべきです。もし、それでも債権者が強硬に妻に対して請求してくるようであれば、警察に相談して違法な取立を禁止してもらうか、又は、弁護士に依頼して妻の代理人として、支払いを拒否する文書を出してもらうのがよいでしょう。