稲井法律事務所

ご質問・ご相談

養育費

Q 離婚して、子供は私が引き取り、夫から養育費をもらうことを考えていますが、そもそも、養育費とはどういうものでしょうか?

A 子を監護していない親(義務者)が、子を監護している親(権利者)に支払う未成熟子の養育に要する費用で、食費、被服費、住居費、教育費、医療費、娯楽費などを言います。

Q 養育費はいくら支払ってもらえるのでしょうか?

A 協議離婚するときに父母双方の協議により養育費の額が定まった場合にはその額、そうでない場合には、家庭裁判所が、子供の数・年齢、夫婦それぞれの収入状況・稼動能力等を考慮して、定めた額になります。
 実務では、家庭裁判所は、原則として、父母双方の基礎収入(総収入に係数を乗じたもの。係数は給与所得者の方が自営業者より小さくなります。)と子供の数・年齢を、「標準算定方式」(東京・大阪養育費等研究会作成による算定方式・判例タイムズNo.1111号参照)にあてはめて、養育費の額を算出し、例外的に、この算出方法により斟酌できない特殊事情を考慮します。
 例えば、離婚した父(給与所得者)の年収が800万円、母(給与所得者)の年収が150万円、2人の子供の年齢が8歳、12歳である場合には、「標準算定方式」によれば、母が父からもらうことになる1ヶ月の養育費の額は約10~12万円になります。

Q 養育費はいつからいつまで支払ってもらえるのでしょうか?

A 父母が離婚した時から、子供が成人に達する月までとするのが一般的ですが、個別事情により異なり、終期を高校卒業時や大学卒業時とした審判もあります。

Q 支払いがない場合には、どういう手段がとれますか?

A 養育費が家事調停・審判や裁判離婚における附帯処分で、定められた場合には、以下の手段があります。
 まず、家庭裁判所が義務者に対し、養育費の支払いを勧告することができます(履行勧告)。
 また、家庭裁判所が義務者を審尋し、その陳述(言い分)を聴いた上で、養育費の支払いを命じることもできます(履行命令)。正当な理由なくこの命令に従わない場合には、10万円以下の過料の支払いが命じられます。
 義務者の申出により、家庭裁判所が権利者に代わって金銭の寄託を受ける制度(家庭裁判所への寄託)を利用することもできます。

Q では、義務者が、履行勧告や履行命令に従わない場合には、どうしたらよいのですか?

A その場合には、義務者の財産を対象に差押えの強制執行をすることになりますが、養育費の場合、一般の差押えと異なり、滞納分(支払期限を過ぎた分)だけではなく、支払期限が来ていない将来の分についても債権執行(給料その他継続的給付に係る債権に対する差押え)を開始することができます。
 養育費については、義務者の毎月の給料につき、一般の場合(手取り金額の4分の1)と異なり、手取り金額の2分の1まで差押えが可能です。