稲井法律事務所

ご質問・ご相談

労働者派遣法の改正

Q 平成27年9月から施行された改正労働者派遣法の重要な改正点を教えて下さい。
A 改正前は派遣期間の制限が業務により異なっていましたが、改正法では、すべての業務について、次の二つの期間制限が適用されます。
 派遣先の同一の事業所(工場、事務所、店舗等)に対して派遣できる期間(派遣可能期間)は、原則として、3年が限度で、派遣先が3年を超えて派遣を受け入れようとする場合は、派遣先の事業所の過半数労働組合等から意見を聴く必要があります(派遣先事業所単位の期間制限)。
 この場合に注意すべきなのは、3年までの間に派遣労働者が交替したり、他の労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めた場合でも、派遣可能期間の起算日が変わらないことです。
 また、同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位(課、グループ等の“部署”)に対して派遣できる期間は、3年が限度になります(派遣労働者個人単位の期間制限)。

Q これらの期間制限を受けない場合はあるのですか?
A 派遣元事業主に無期(期間の定めのない)雇用されている派遣労働者や60歳以上の派遣労働者を派遣する場合、終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合には、このような期間制限を例外的に受けません。

Q 組織単位を変えれば、同一の派遣労働者を、同一の事業所に対して、引き続き、派遣できるのですか?
A 派遣先が事業所の過半数労働組合等から意見を聴いて、事業所単位の期間制限による派遣可能期間が延長されていれば、そのような派遣が可能です。
 ここで重要なのは、契約開始から5年が経過した場合に、当該派遣労働者には、労働契約法に基づいて、無期転換申込権が発生することです。契約期間の末日までにこの権利を行使することにより、有期労働契約は無期労働契約に転換します。

Q 派遣先が、期間制限に違反して、労働者派遣を受け入れた場合はどうなりますか?
A その場合、違法派遣の受け入れとして、派遣先は、善意無過失である場合を除き、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます(労働契約申込みなし制度)。

Q 期間制限の規定により、雇用が安定しない状況になる場合が出て来ませんか?
A 改正法は、派遣労働者の雇用の安定化が推進されるように、派遣元事業主に対して、派遣労働者を同一の組織単位に継続して3年間派遣した場合に、次の①~④のいずれかの措置を講じる義務を課し、また、派遣労働者が同一の組織単位に1年以上派遣される見込みがある場合には、同様の措置を講じる努力義務を課しました。
 ① 派遣先への直接雇用の依頼
 ② 新たな派遣先の提供(派遣労働者の居住地やこれまでの待遇
   等に照らして、合理的なものに限られます。)
 ③ 派遣元事業主による無期雇用
   派遣元事業主が、対象となる派遣労働者を無期雇用とし、自
   社で就業させる(派遣労働者以外の働き方をさせる)もので
   す。
 ④ 有給の教育訓練や紹介予定派遣等の雇用の安定を図るために
   必要な措置
 対象となる派遣労働者を派遣元事業主が無期雇用とした上で(期間制限の対象外になります。)、これまでと同一の派遣先に派遣する措置は②に該当しますが、この措置と③においては、労働契約法に基づく無期転換申込権が行使された場合よりも早いタイミングで、無期労働契約への転換が図られ得ることになります。