稲井法律事務所

ご質問・ご相談

過労死

Q 過労死とはどういうことですか。
A 言葉の意味としては、過労が原因で病気になり死亡することを過労死といいますが、労災保険の遺族補償の対象となる過労死というのは、過重労働による過労や業務上の重圧によるストレス等が原因で脳・心臓等に疾患を発症して死亡するものを言います。過労やストレスが蓄積してうつ病になりそれが原因で自殺した場合もこれに含まれます。なお、死亡は免れたものの重度の障害を残した場合は労災保険の障害補償等の対象になります。

Q 労働による過労が原因であれば誰でも労災保険の対象になるのですか。
A 労災保険の対象になるのは「労働者」ですので、管理職の立場にある人は対象となりません。但し、名目上管理職とされていても実態が従業員と変わらなければ労働者として労災の対象になります。又、個人事業主であっても労災保険に特別加入している人は労災の対象になります。

Q 労災保険の補償を受けるにはどうすればよいのですか。
A 労働基準監督署に申請をし、業務災害の認定を受ける必要があります。この申請には時効があり、2年(療養補償や休業補償など)又は5年(遺族補償と障害補償)以内に申請しなければなりません。

Q 業務災害の認定を受ける為にはどうすればよいのですか。
A 「業務起因性」といって、過労やストレスが労働者の従事していた業務を原因としていることを証明する必要があります。どのような場合に業務起因性があるかについては、労働時間や勤務形態、作業環境、精神的緊張の状態などを総合的に判断する必要があり、厚生労働省から、過労死については「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」が、過労自殺については「心理的負荷による精神障害の認定基準」が出されています。

Q 長時間の過重労働についてはどのような判断基準が定められていますか。
A 過労死については、週40時間の法定労働時間を超える時間外労働の時間が、死亡前1ヵ月間に100時間を超えているか、死亡前の2ヵ月間~6か月間のいずれかで月平均80時間を超えている場合には原則として業務起因性が認められる、等の基準が定められています。但し、過労自殺については別の基準が定められています。

Q 過労死を発生させた会社には賠償責任はないのですか。
A 会社には労働者が過労に陥らないように配慮する義務があるので、過労死を発生させれば、多くの場合、会社はその義務に違反したという理由で民事上の損害賠償責任を負うことになります。但し、労働者側に持病等の過労死を誘因するものが認められるときには、会社の賠償責任が軽減されることもあります。

Q 国において、過労死を防ぐための対策はなされているのですか。
A 平成26年6月に「過労死等防止対策推進法」という法律が制定され、平成26年11月から施行されました。この法律には、国が過労死に関する調査研究を進め、国と地方自治体が過労死を防止するための取り組みを推進すべきこと等が定められています。この法律の成果が期待されます。