稲井法律事務所

ご質問・ご相談

従業員の退職金

Q 従業員の退職金には、どのような種類のものがありますか。
A  退職金には、賃金の性質を有し使用者が支払わないときには従業員から支払いを請求できるものと、恩恵的な給付金の性質を有し退職金を支払うか否かが使用者の裁量に任されており従業員から支払いを請求できないものがあります。
 又、支払方法による区別として、一時払いのものと、年金として分割して支払われるものとがあります。

Q 賃金の性質を有する退職金というのはどのようなものですか。
A 就業規則、労働協約、労働契約に、退職金を支払うことの定め(支給すること及び支給基準)があるか、若しくは、それらの定めがなくとも、退職金支払いの労働慣行があるか、又は、使用者と従業員との間で退職金を支払うとの合意がある場合には、使用者が支払わないときには従業員から使用者に対して退職金を支払うよう請求することができます。このような退職金は、賃金として、労働基準法等の適用を受けます。

Q  退職金支払の労働慣行というのは、どういう場合に認められるのですか。
A 裁判所は、過去に退職した従業員に対して一定の基準に基づいて退職金が支払われているような、退職金支払いの就業規則が存在すると同視できるような事実の集積がある場合に、退職金支払の労働慣行があると認めています。

Q  退職金の支給基準にはどのようなものがありますか。
A  それぞれの会社で、様々な規定が設けられていますが、退職金の金額については、一般には、算定基礎賃金に勤続年数別の支給率を乗じて算定されています。又、自己都合退職と会社都合退職が区別され支給率が変えられているものもあります。更に、同業他社への就職や懲戒解雇等、使用者にとって好ましくない事由があるときには減額したり、支給しないとされていることもあります。

Q  使用者にとって好ましくない事由があるときには退職金を減額したり支給しないということが許されるのですか。
A  裁判所は、就業規則に減額・不支給の規定があったとしても、従業員のそれまでの勤続の功労を無に帰すほどの背信行為があった場合には退職金を減額・不支給とすることが許されるが、そのような背信行為がなかった場合には、その規定の適用は許さない、としています。なお、労働慣行による退職金の請求について、在職中に重大な背信行為をしていた従業員からの退職金請求は権利の乱用に当たるとした裁判例があります。

Q  従業員が死亡した場合には死亡退職金は誰が受け取れるのですか。
A  死亡退職金の受給権者の範囲・順位等が法令・労働協約・就業規則等で明確に定められている場合、又は慣行により受給権者が定まっている場合は、その受給権者が受け取ることになります。この場合にはその退職金は相続財産には当たらないとされています。しかし、受給権者が定められていない場合は、相続財産とされ、相続人が受取人になります。