稲井法律事務所

ご質問・ご相談

労働審判制度

Q 平成18年4月から「労働審判手続」という新たな制度が発足したと聞きましたが、それは、どういうものですか。
A 近時の司法改革の一環として、個別労働紛争を、①地方裁判所で専門的に、②早期に、③事案に即して柔軟に解決することを目的として新設された制度です。

Q どのような事件を取り扱うのですか。
A 個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係についての民事紛争(例えば、解雇、配置転換、労働条件の引き下げ、賃金不払等)が対象となりますが、労使交渉、就業規則の変更、従業員間の紛争、雇用関係が成立する前の採用・募集、等は対象となりません。

Q 個別労働紛争を解決する制度は今までにはなかったのですか。
A 労働基準監督署による指導、都道府県労働局の助言・指導、紛争調整委員会のあっせん、裁判所の調停・仮処分・訴訟等がありました。

Q では、なぜ労働審判手続が作られたのですか。
A 従前の制度は、あるものは手続きに時間がかかったり、あるものは強制的に結論を出すことができなかったり等、それぞれに一長一短があったので、それらの不都合を解消する新たな制度として、「調停で解決できれば調停で解決し、3回の期日で調停が成立しなければ審判をする、その審判に不服があれば、異議の申し立てにより訴訟で争うことができる。」という制度が作られたのです。

Q その制度の概要を教えて下さい。
A ①1名の裁判官と、労使の実務家である2名の労働審判員の合計3名による労働審判委員会が、②3回以内の期日で、③調停又は審判によって解決することにし、その審判の内容は、判決のように零か百かの結論ではなく、権利関係を踏まえつつも事案に即した柔軟な内容のものとすることができ、④審判に異議があれば訴訟に移行して争うことができ、⑤手続きは非公開で行う、⑥複雑な事件で迅速に解決できないものについては手続きを終了させて訴訟に移行させることができる、というものです。

Q 手続の流れはどうなりますか。
A 申立があると、原則として40日以内に第1回期日が定められ、申立人と相手方は証拠や答弁書を準備します。第1回期日には、書面として、申立書と答弁書、書証が提出され、それ以外は口頭で主張立証することになります。必要な証人調べも行われます。当事者は第2回期日までに主張立証を終えなければなりません。労働審判委員会は、第1回期日から調停を試みることができ、第3回期日でも調停が不成立の場合には、審理を終結して、その日に口頭で労働審判を言い渡すか、又は、後日書面で労働審判を通知することになっています。

Q 審判に不服がある場合はどうなりますか。
A 2週間以内に異議申立をすることにより事件が訴訟に移行します。その場合、申立書は訴状とみなされて訴訟に引き継がれますが、それ以外のものは引き継がれず、新たに主張立証をすることになります。